2010年8月29日日曜日

8月も終わりに近づき

夏休みも終わりですね。
まだまだ熱波は居座り続けていますが、
夜に聞こえてくるのは、
秋の虫の音。

サンダルを履くのも、
薄い服をまとうのにも、
そろそろマンネリ気分です。

季節の変わり目を早く迎えて、
身の回りも、衣服も一新して、
すっきりとリフレッシュしたくなってきました。

でも夏の課題図書がまだ残っています。
夏に読んだ本のご報告も終わっていないし。
こちらも秋の準備に向かったほうがいいですね。

2010年8月27日金曜日

「原稿零枚日記」

「原稿零枚日記」 小川洋子著 集英社

しばらく前に小川洋子さんと堀江敏幸さんの公開対談が芦屋で催された時、
堀江さんが小川さんの作品の特徴として
“肌、皮膚、皮膚感覚”を挙げられたのです。

そういえば、小川さんの作品には皮膚感覚に優れた描写が多くあると
ようやく気が付いたのです。

この作品ではその皮膚感覚がさらに研ぎ澄まされて、
五感が微細に敏感に反応しています。
肌で感じ取ったものを具体的に目で確かめ、
足の裏で感じ、情報に耳をすませ、
ゆっくりと丁寧にルーペで覗き込み、
舌で食感を、そして最後に脳内で総合的に味わうのです。
冒頭の9月の日記にはそういう小川さんの特徴が染みとおっています。

読み進めて、この作品の中に潜む“小石”を見つけます。
その部分は読んでいただくとして、
この作品は日記ということですから、
主人公の作家がいろいろな体験やそこから感じたことが、
ひっそりと正直に書かれていることになっています。
体験そのものはささやかな表現で納められているのですが、
主人公の内向的な性格と繊細な心理描写が、
この書き手の独特な嗜好を示しています。
日記に写し取られたその作家の心が、だんだんと姿かたちを取り、
立ち上がってくるのです。

そしていつの間にか読み手は日記の中に取り込まれていくのでした。
読んでいるとなんだか自分の性格や嗜好も変わってしまったような気分になるのです。

2010年8月25日水曜日

汗をかきながら読書

この3日間、時間のある限り読書。
なぜか読まないと落ち着かなくて、
駅や停留所はもちろん、
帰宅してからも鞄を放り投げて読んでいます。

読んでいたのは、
「尼僧とキューピッドの弓」 多和田葉子
「散歩のあいまにこんなことを考えていた」 松浦寿輝
「クーデンホーフ光子の手記」 シュミット村木眞寿美編訳

共通点は国境線を越える人のようですね。
外国語を解しないというのに、
こういった人々の話はとても楽しく頼もしく感じます。
さて次の本は・・・と。

2010年8月22日日曜日

アーサー・ランサムについて少し

アーサー・ランサムが「ツバメ号とアマゾン号」を発表したのは1930年。
イングランド北部のウィンダミア湖が舞台だそうです。

1884年生まれのランサムは早くから文筆活動をはじめ、
従軍記者となったり、ロシア革命や中国革命を取材したりと、
ジャーナリストとしても活躍したようです。
「ツバメ号とアマゾン号」に続いて11冊の児童文学を成しています。

これら12冊の魅力はなんといっても、
実在するかのような子供たちの姿でしょう。
子供たちの生き生きとした様子、
個々の個性の豊かさ、
何と言っても、さりげなく描かれた細やかな心理。
この子供たちを輝かせているのは、作者の指向性にあるでしょう。

訳者の神宮輝夫さんは“訳者のことば”の中でこう述べています。
 “12冊の物語には、どこにも解放された休暇のよろこびがあふれています。
  このよろこびはレクリエーションというようなものではなく、
  人間がもっとも人間らしくなったときに感じる深いよろこびだとわたしは
  思います。つまり、ランサムは、どんなに時代が変わっても、人間が
  人間であるかぎり、持ち続けるよろこびをとらえたのだと思います。
  そのよろこびをさらにこまかく分ければ、新鮮な興味、行動への意欲、
  自然の恵みの享受など、いろいろになるでしょう。”

人間らしいよろこびに溢れるお話を12冊も堪能できるのです。
このような作品を書いたランサムですから、
同じ神宮さんの訳の自伝も面白いに違いありません。
リストに加えておくことにします。

2010年8月21日土曜日

「ツバメ号とアマゾン号」

「ツバメ号とアマゾン号」 アーサー・ランサム著 神宮輝夫訳 岩波少年文庫

ランサム・サーガの第一作目「ツバメ号とアマゾン号」。
ツバメ号の乗船員たちの初めての冒険。
そしてアマゾン号との出会い。
素晴らしい環境と、乗組員たちを見守る良き原住民たち。
この上なく幸せな体験。

イギリスには多くの優れた児童文学が存在しますが、
このランサム・サーガにたどり着いたら、
少年少女時代の読書体験のラストを見事に飾ってくれることでしょう。

やたら下手な説明などしないほうがいいのです。
ご存知でない方には、一読をお勧めいたします。
健やかな心地になることは間違いありません。

2010年8月20日金曜日

カニグズバーグとの出会いは

「800番への旅」の作者カニグズバーグは、
Elaine Lobl Konigsburg 1930年生まれの
アメリカの児童文学の作家です。

1967年に「クローディアの秘密」でデビューし、
数々の作品を発表しており、
邦訳も主に岩波少年文庫からいくつか出ています。

その岩波少年文庫から出た「クローディアの秘密」を
読んだのは小学生のことでした。
ちょっと背伸びした高学年の女の子のお話で、
そのくらいの年齢の子なら確かに考えそうなアイデアから
お話は始まります。
考えてみても想像で終わってしまうのが常ですが、
クローディアは実行してしまうところが、たくましい。
そこから思いがけない事実と遭遇し、
クローディアは一気に大人の世界へ入り込むのでした。

現代を舞台にしていることもあって、
写実的な描写と相まって児童文学にはあまりないリアル感があり、
読んだ当時は戸惑いました。
それまではファンタジックな物語を好んでいたものですから。

数十年経って「800番への旅」を読んでみると、
このカニグズバーグの手法が魔法のように活かされていることに
気が付きました。
ありえなさそうな話だけど、
実際にあってもおかしくはない。
すっかり信じきって読むことができるのです。
物語(小説)の醍醐味だなぁと思います。

すっかり遠くなってしまっていた子供の頃の心理を引っ張り出して、
懐かしいというより、複雑な気分です。
枝葉を削って少しはすっきりとしていたらいいのに、
そんな大人には到底なりっこ無いとよくわかったからです。

2010年8月19日木曜日

「800番への旅」

「800番への旅」 E.L.カニグズバーグ著 岩波少年文庫

児童小説の姿ではありますが、
大人が読むにふさわしい作品です。

主人公のマックスは中学生、
お金持ちのF.H.マラテスタ一世と再婚した母親が
ハネムーンに出かけている間、
父親のウッドローと一緒に過ごすことになりました。

この父親とラクダ(!)のアーメッドとの3者で
現代アメリカを旅をするのです。

あらすじをばらしてしまいたいくらい
ユニークな事件が次々と起こります。

ユニークな親子との不思議な遭遇、
父親と仲の良いたくましい家族たちとのかかわり、
包容力豊かな女性と過ごすひと時。
日常とすっかりかけ離れた日々を過ごす中で、
マックスは多くのことを悟り、学びます。

会話のテンポの良さと、
シチュエーションの見栄えの良さを、
無駄なく語り継ぐ手際も、
見落としてはいけません。

最後の最後まで読ませてくれます。

問題はアメリカの地理に明るくない読者は
地図を参照にしなければならないってことでしょうか。

2010年8月18日水曜日

猛暑

ごぶさたしております。
ようやく体調も回復し、落ち着いてまいりました。

本もぽちりぽちりと読めるようになってきましたので、
そろそろ独り言を復活させたいと思います。

それにしても、この暑さは尋常ではありませんね。
日本で通常に生活するのに、どこまで耐えられるのでしょうか。
体力が持ちません、夏休みを一般人も導入しましょう。
木陰でゆっくり頭を冷やしてから再び活動すれば、
経済面でも効果があるかもしれないと想像しています。

蝉の鳴き声もピークを過ぎて、
日照時間も少しずつ短くなってきているのに、
気温だけが高くて、
秋はいったいどこにいるのでしょう?