2012年8月13日月曜日
「メグレ推理を楽しむ」
「メグレ推理を楽しむ」 ジョルジュ・シムノン著 仁科祐訳 河出書房新社
昔、河出書房新社から出ていたメグレ警視シリーズ。
amazonで取り寄せるしか、手軽な方法は思いつきません。
こうでもしないと、メグレを読めないこの寂しさ。
さて、この本はヴァカンスを楽しむはずのメグレが、
新聞を頼りにある事件を解決へ導くという珍しいものです。
いつもの警視庁のジリジリとした緊張感はありません。
メグレはお休み中ですから。
ただ事件を追うメグレの頭の中はもう仕事と同じ様子です。
事件について一緒に推理し、
新聞が出るたびにその進展を追うのもなかなか楽しいものです。
この時代はまだテレビが普及していません。
テレビが無くても困らないものだな、と思います。
メグレ物を読んでいて安心感が感じられるのは、
メグレが既に立派な職に就いているということや、
フランス国内での戦争は無く、
産業界が活発に次世代に向かって動いていること、
五月革命にはまだ遠く、
メグレの世代の人間が生活を楽しむことができた時代であることが、
大きく反映されているからでしょう。
その分、生きづらい閉塞的な環境もあったとは思いますが。
1957年、まだ社会は古い世代でありました。
社会は変化し続けて現在があります。
より複雑になっていっていると感じます。
なんだかメグレの時代がノスタルジックにのんびりと思われて、
心地よさそうに見えるのは、ゆがんだ鏡のせいでしょうか。
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