ようやくユルスナール「追悼のしおり」を読み始めました。
第一章は“出産”。
ブリュッセルでマルグリットが生まれたことを指しています。
この章では、父ミシェルと母フェルナンドが、
ブリュッセルに居を構え、生活を始めた前後の頃の話が
詳しく書かれています。
人から聞いた話がほとんどのはずなのに、
まるで自分で見たか、直接聞いたか、創作しているかのように、
筋も自然に成り立っています。
主に母フェルナンドがどのような人であったか、
独特な魅力の持ち主で、とくに声が美しかったようです。
想像力と奇想に満ち、読書好きで、古典語も少し理解した
とても信心深い人だったようです。
そして体の不自由な姉ジャンヌを深く愛し、
ジャンヌのお世話していた幼女の頃からの子守役であったフロイラインを
とても大切にしていました。
五人の兄弟と四人の姉妹を持ったフェルナンドと、
再婚したミシェルには、ノエミという大きな権力を握った母がいました。
この章ではこのノエミの横顔が少し見られます。
ミシェルはユルスナールが生まれたときには49歳。
始めの結婚生活は15年も続いて、
既に19歳になる息子プチ・ミシェルがいました。
プチ・ミシェルは祖母ノエミのお気に入り。
なので、ミシェルに二人目の子供が生まれたことを、
あまり快く思っていなかったようです。
ユルスナールを難産の末生んだ母フェルナンドは、
産褥熱と腹膜炎のため、10日後亡くなります。
というような内容は生を受けた人には誰にでも個々にあるエピソードですが、
ユルスナールは人々の心理を推察しながら、
特に父ミシェルの立場を踏まえて、描いています。
そして、ユルスナールらしい慧眼を用いた言葉で、
人々の言動を受け止めています。
その1900年当初の当時、彼らのような貴族の末裔たちが
暮らしていた実態を書きとめているというわけです。
出産がどのように考えられ、受け止められていたか、
一つのケースとして見ることができるでしょう。
ノンフィクションとも違い、小説でもない、
回想という形に冷静な客観性を用いたユルスナールならではの
仕事と思われます。
自分のことを愛情を込めた上で、
これだけ淡々と話を運ぶのは難しいことだと思います。
まだ47ページまでしか読めていないので、
“出産”の章は続きが残っています。
これからどうなっていくのでしょう。
大切に少しずつ読んで参ります。
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