2012年1月29日日曜日

「「赤毛のアン」の人生ノート」


「「赤毛のアン」の人生ノート」 熊井明子著 岩波現代文庫

「赤毛のアン」を愛する人はどれほどいるでしょう。
いつの時代もいろんな場所で多くの人に親しまれている本ですね。
この本を読んだのは11歳くらいのことでしょうか。
とても楽しく読んだことを思い出します。
そして一気に全巻、続いてモンゴメリの他の作品を読みふけりました。
美しい風景の中に優しい人間味あふれる人々が登場する素敵なお話群。
人はこういう幸せな空気を吸う必要があるのではないかと思います。

著者の熊井さんはアンの本から多くを学び、
そしてそれらについて調べ、アンの世界を深く広げている人でしょう。
数多くのエッセイでも知られておられますが、
その豊かさに魅せられている人はアンのファンと重なるのではないでしょうか。

ここでは、熊井さん自らアンの本から学んだことを、
具体的に若い人向けに講義されています。
あらためてアンの本を読んでみようと思う人も多いでしょうね。

個人的にはアンの世界は夢のようだし、
アンという人物は出来過ぎの感があります。
読みながら自分とあまりの違いに違和感を感じたものでした。
読者としての世代の問題もあるかと思います。
そんなアンびいきではない人間にとっても、
この本はアンを見直すよいお手本となってくれました。

2012年1月26日木曜日

追悼 テオ・アンゲロプロス監督


映画界を代表するギリシャの監督テオ・アンゲロプロスが亡くなりました。
自動車事故だったそうです。

現在20世紀のギリシアの歴史を描いた3部作の第3作を製作中だったそうで、
大変残念なことです。
他に言葉がありません。
現代であれだけ壮大なスケールの作品をじっくりと作り上げる人は、
他に類をみないでしょう。

第2作は今年上映予定だということですが、
遺作となった第3作もなんらかの形で観ることができればと思います。

アンゲロプロス監督の作品から一番強く受けた印象は“怨念”でした。
フィルムに人々の涙と嗚咽が刷り込まれているようでした。
そして生き抜く人々の強さが映画を支えています。
生きるということの苦しさ、つらさ、強さを最も伝え、
庶民の姿から歴史を描いてみせる稀有な監督だと思われます。

ご冥福を祈るとともに、
これからの映画界を見守ってくださることを祈りたいと思います。

2012年1月25日水曜日

庄野至さんの本を読んだり


日本列島が冷え込んでいます。
とても冷たい。
雪国はどんなに冷えてるんだろう。
どれくらい続くのかな。
明るい陽射しが待ち遠しい。

まだ1月ですから寒さには辛抱が必要です。
帰宅したら冷えたお部屋を暖めます。
お風呂に浸かって身体がほかほかとしたら、
少しだけ本を読みます。

今は庄野至さんの本を読んでいます。
庄野さんが幼かった頃の家族の話を中心に、
帝塚山学院を創立したお父さんや、
お兄さんの英二さんや潤三さんが登場します。
庄野ファミリーのファンの人には親しみやすい文体で、
どこかお兄さんたちと似ています。

そうなのです、このツキスミというネームも、
至さんに遠からず関係があります。
だからちゃんと読んでおかないといけません。

実は潤三さんの本はほとんど読んだことがありません。
楽しみにとってあるのです。
穏やかな日々が来ることを期待して、
少しずつページを繰る楽しみを残してあります。

2012年1月22日日曜日

「スワン家の方へⅡ」読み終えました


「失われた時を求めて」第2巻
「スワン家の方へⅡ」 マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫

第1巻では語り手が幼少時にコンブレーを訪れたときのことを回想していました。
第2巻ではコンブレーの祖父の家を度々訪ねてきていたスワン氏が主役となっています。
スワン氏がまだ少し若く、オデット・ド・クレシーに恋をする「スワンの恋」。

ブルジョワのヴェルデュラン家のサロンを中心として話は巡り、
スワン氏がそのサロンで歓待されていた時には、
恋も順調だったようですが、
少しずつヴェルデュラン夫妻との関係も複雑になり、
オデットはいかにもどっちつかずに上手に振る舞います。

オデットの真意はどこにあったのでしょう。
常に金銭的には困っていて、スワンを当てにしているようなのです。

この417ページに渡って、スワンは恋に悶々とするばかりです。
胸に覚えのある人はようくわかりますね。
答えなどあるわけないのに、彼女のことばかり考えているのです。
そんなある夜サン=トゥーヴェルト侯爵夫人邸の夜会に出かけ、
ヴァントィユ(第1巻で登場していた作曲家ですね)の楽曲を聴き入っているうちに、
オデットの心が離れてしまったことを悟るのでした。
そういいながらも、二人の関係がすっかり終わるわけではなく、
オデットの面影を追い続けているスワン。
本当は俺の趣味ではないと悔いながら。

さて、舞台はここで変わります。
タイトルも「土地の名・名」。
語り手は第1巻と同じ人ですが、1巻のときよりも成長しています。
この「土地の名」をめぐる夢想は大変美しいものです。
私たちもなんらかの憧れを持っている土地の名を耳にするとき、
胸が膨らんで、心が震えてきたりしますね。
この章は自分の気持ちを言葉に置き換えてもらっているようで、
うっとりとしてしまいました。

最後にもう一つ大切なシーンが出てきます。
スワン夫妻の娘ジルベルトとシャンゼリゼで遊ぶようになったのです。
スワンがオデットと結婚して、ジルベルトが生まれています。
語り手はスワン氏をジルベルトの父として、
オデットを母としてまた美しい人の代表として崇めています。
オデットを一人の女性として眺め、
それからずっとのちになって、
そんな女性が淑やかにブーローニュの森を散歩していた時代を、
懐かしく振り返ってこの章は幕を閉じるのでした。

“あるイメージの追憶とは、ある瞬間を惜しむ心にすぎない。
 そして家や道や、通りは、逃れて消えてしまうのだ。
 ああ、ちょうど歳月のように”

プルーストの小説はこのようにイメージが大変美しい文章となっています。
その言葉が表すイメージを再起動して自分のイメージを作り出すのも、
ひとつの楽しみではないでしょうか。

2012年1月18日水曜日

おだかやかな一日


心配していた腹痛も治る兆しが見え、
左手の腱鞘炎も癒え、
右ひざの痛みも治まり、
後はこれから悪化しそうな右手の腱鞘炎に対して、
対処していくだけになりました。
痛みが少ないととても気持ちが楽です。

今日は「失われた時を求めて」第2巻を読み終え、
庄野潤三さんの弟の庄野至さんの本をぱらぱらとめくり、
「モモちゃんとアカネちゃん」を少し読み、
熊井明子さんの「赤毛のアンの人生ノート」を読む準備をしたり、
なかなか充実した一日でありました。

今欲しい本は福岡伸一さんの本と、
みすず書房から出ている数冊。
でも買ってしまうと、つい読み始めてしまいますから、
順番はある程度考えておかないと、
肝心な本を読みそこないます。

いえ、本のことばかり考えているわけではありません。
昨日は1月17日、阪神大震災から17年目の日でした。
体験した人にとってはいくら日月が経っても、
忘れることのない衝撃的な、心痛を患った日です。
そして関西ではなかなか現状がわかりにくい東北・福島の状態も
気になります。
普通の人々がさりげなく何か力になることができればいいのにと
思うのですが。情けない自分を情けなく思います。

この小さな絵馬は今年橿原神宮で頂戴したものです。
小さな祈りではありますが、
復興と心の平安を願いたいと思います。

2012年1月15日日曜日

とんど焼き


近頃はこんなどんよりとしたお天気ばかりです。
朝は暗いし、冷え込んでいますね。
春までまだまだ遠いのですが、
季節を編みこんでいくように進める行事がいくつかあります。
今日は1月15日でとんど焼き。
近くの神社へしめ縄や、
昨年、橿原神宮で頂いた小さな絵馬などを持って出かけました。

お正月と同じようにお参りをして、
焼いて清めてもらうものをお願いして、
笹酒を頂いてきました。

読書の方は年明けから順調に進んでいます。
もう一息で「失われた時を求めて」第2巻が終わりそうです。
並行してモモちゃんシリーズも読んでいます。
2月にはユルスナール「北の古文書」に入れそうです。

体調の方はというと、風邪はどうやら治まったのですが、
今度は先週からお腹が痛いのです。
胃の左側です。むむむ。
軽くて済むといいのですが。

そんな中で、先日の“歌会始”の記事を読みながら、
早く60歳になって日本の古典の勉強をしたいものだと考えたりしていました。
計画では50歳で哲学のつまみ食い、
60歳で平安文学をおさらいすることにしていますが、
長生きはしたくないという希望に逆らっているこの矛盾。
できることならフランス語の勉強もしたいし、
もちろん旅もしたいです。
こんなに欲があったら長生きしてしまうかもしれません。

2012年1月11日水曜日

「辻邦生のために」


「辻邦生のために」 辻佐保子著 中公文庫

辻邦生夫人の辻佐保子さんは、
ヨーロッパ美術史の研究家として著名な方です。
辻さんの最初の渡航時代の「パリの手記」で〝A”として登場し、
頼り頼られのお二人であったことは読書当時感心していたものでした。
新聞連載だった「のちの思いに」では“リスちゃん”という
可愛い名称で登場します。

辻さんが思いもかけなく早くに亡くなられて、
佐保子さんはどんなに寂しかったことでしょう。
哀しみに暮れるだけで終わらず、
このような批評眼を持ったエッセイを書かれたことは、
なかなかできることではないでしょう。
辻さんの執筆に関する熱意や、手法について知ることも
読者にとっては神秘の表れを見るような思いですし、
佐保子さん独自のエッセイも学者らしいエピソードが盛り込まれて、
独創的なものとなって、楽しませてくれます。

佐保子さんの書かれた個人的なエッセイをもっと読んでみたいと
思っていた矢先、ご本人の訃報に接しました。
81歳におなりだったそうです。
きっと、辻さんと生前と同じように楽しく過ごされていることと思います。

合掌。

2012年1月9日月曜日

「とりつくしま」


「とりつくしま」 東直子著 ちくま文庫

しばらく更新を怠っておりました。
休みの日はすぅすぅと寝てばかり。
新しい事務所は明るくて暖かくて、
以前とは大違い。
ありがたいのですが、まだ慣れません。
気分も明るくなるといいのですが。
仕事柄毎日事件が起こります。
大変大変、忙し忙しが口癖です。
今年こそマイペース元年と称して、
落ち着いてやっていこうと誓う、
この部署4年目でございます。

さて「とりつくしま」です。
とても素敵な切なくなるお話ばかり詰まっています。
“とりつくしま”とはいったいなんぞや?
はい、死後に何かにとりつくのであります。
種明かしはこれくらいにしておいて、
著者の東さんは歌人でいらっしゃいます。
だからか、言葉の選び方、運び方がとても丁寧で、
心地よさが感じられます。
そしてこのシチェーションで自分だったらどうするだろう?と
つい自分を反映させてしまうリアリティがあります。
お話の手際の良さもありますが、
一番心に残るのは“優しさ”かなと思います。
人間の良いところの一つですね。

2012年1月3日火曜日

「長い冬休み」


「長い冬休み」 アーサー・ランサム著 神宮輝夫訳 岩波少年文庫

いつもの湖で夏に繰り広げられる冒険が、
今年は冬が舞台です。
それに、今回はドロシアとディックのカラム兄弟が加わっています。

ドロシアは普段は本の中でしか体験できない冒険譚を
ロジャやティテイたちに聞かせられて、
本当のことかと信じられない思いです。
それが本当に自分たちに起こっているのです。

今回からは旗信号や手旗信号の通信手段も加わって、
さらにスリルが増しています。
その上ナンシイがおたふくかぜに罹ってしまうアクシデント?!
思いがけない展開に手に汗を握ってしまう・・・

それにしても子供たちはタフですね。
とてもパワフルなのに感心してしまいます。
そしてチーム・パワーがさらにアップして、
すごく充実していて楽しいそうです。

ランサムの丁寧な細かい描写もなかなか見逃せません。
子供の心理を踏まえつつ、その行動を描いています。
冬休みを満喫するにはぴったりの本です。

2012年1月1日日曜日

初詣2012


あけましておめでとうございます。
今年の奈良のお正月は暖かく穏やかな日和でした。

ゆっくり目に起きて、
ご先祖様にご挨拶して、
まずは杯を開けておせちをいただきます。
届いた年賀状を各人に配り、
無精ゆえの未書状をしたためます。
そして近くの神社に初詣。

小さな神社ですが、
参道に行列ができています。
小一時間待ちましたが、
暖かかったので、苦になりません。
並ぶ他の人たちの様子を眺めていました。

お参り時には、すごく独善的なお願いをしてしまいました。
いつもは平穏無事などとお願いしているのですが、
欲張ったところで、逆にいいことは無いような気がします。
ちょっと後悔。

帰宅後はゆっくりお茶を飲んだり、
羊羹を切ったり、
しっかり午睡もして、
ゆったりとしたお正月をすごしたのでした。

夜は個人的な時間です。
ブラッド・メルドーのライブCDを聴きながら、
これからのことなど考えたいと思います。