2012年1月11日水曜日
「辻邦生のために」
「辻邦生のために」 辻佐保子著 中公文庫
辻邦生夫人の辻佐保子さんは、
ヨーロッパ美術史の研究家として著名な方です。
辻さんの最初の渡航時代の「パリの手記」で〝A”として登場し、
頼り頼られのお二人であったことは読書当時感心していたものでした。
新聞連載だった「のちの思いに」では“リスちゃん”という
可愛い名称で登場します。
辻さんが思いもかけなく早くに亡くなられて、
佐保子さんはどんなに寂しかったことでしょう。
哀しみに暮れるだけで終わらず、
このような批評眼を持ったエッセイを書かれたことは、
なかなかできることではないでしょう。
辻さんの執筆に関する熱意や、手法について知ることも
読者にとっては神秘の表れを見るような思いですし、
佐保子さん独自のエッセイも学者らしいエピソードが盛り込まれて、
独創的なものとなって、楽しませてくれます。
佐保子さんの書かれた個人的なエッセイをもっと読んでみたいと
思っていた矢先、ご本人の訃報に接しました。
81歳におなりだったそうです。
きっと、辻さんと生前と同じように楽しく過ごされていることと思います。
合掌。
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