2013年4月14日日曜日

ガデンヌとパヴェーゼ

久しぶりに「短編コレクションⅡ」河出書房新社を広げてみました。
ちょうどポール・ガデンヌのところからでした。
たぶんそれで止まっていたのだと思います。

ポール・ガデンヌ「鯨」は堀江敏幸さんの訳によるもの。
「白鯨」を読んでいないので、十分に読むことはできていないと思います。
ただ、途方もなく生きる価値のあるものが、
浜辺に打ち上げられ、息絶えている、その様子を想像することは、
文章だけでも可能ですが、ここでは第二次世界大戦のことを
考慮しなければなりません。
第二次世界大戦後、文学の世界は大きく変わり、多様化しました。
そのほとんどを私は読んではいないわけですが、
このような虚無感というのは、戦争をじかに経験したものにしか
生み出せないような気がします。
一体何が私たちにこういう人生を与え、何が大切なのか、
神様はどこへ行ってしまったのか。
打ち上げられた鯨を目にして感じるのは、
この世で失ったものではないでしょうか。
それらを受け止めて生きていくというのは、
どれほどの精神力が必要なのでしょう。

続いてチェーザレ・パヴェーゼ「自殺」。
パヴェーゼの生きることへの迷い、つらさ、悲壮感に満ちた作品に、
どうしても引き寄せられてしまいます。
マイナス思考になりそうだと思い、
距離をおくようにはしているのですが、
今回もどっしりと来ました。
それに加え、訳者の河島英昭さんの文章、言葉遣いに惹かれるので、
末尾のミニ解説がずんと押し寄せてきます。

どちらの作品もほとんど泣けてきます。
明るく生きたいと望みながらも、
人間ってこういうものだと考えている自分が、
実は根本にあるのだと思うのでした。

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