久しぶりに「短編コレクションⅡ」河出書房新社を広げてみました。
ちょうどポール・ガデンヌのところからでした。
たぶんそれで止まっていたのだと思います。
ポール・ガデンヌ「鯨」は堀江敏幸さんの訳によるもの。
「白鯨」を読んでいないので、十分に読むことはできていないと思います。
ただ、途方もなく生きる価値のあるものが、
浜辺に打ち上げられ、息絶えている、その様子を想像することは、
文章だけでも可能ですが、ここでは第二次世界大戦のことを
考慮しなければなりません。
第二次世界大戦後、文学の世界は大きく変わり、多様化しました。
そのほとんどを私は読んではいないわけですが、
このような虚無感というのは、戦争をじかに経験したものにしか
生み出せないような気がします。
一体何が私たちにこういう人生を与え、何が大切なのか、
神様はどこへ行ってしまったのか。
打ち上げられた鯨を目にして感じるのは、
この世で失ったものではないでしょうか。
それらを受け止めて生きていくというのは、
どれほどの精神力が必要なのでしょう。
続いてチェーザレ・パヴェーゼ「自殺」。
パヴェーゼの生きることへの迷い、つらさ、悲壮感に満ちた作品に、
どうしても引き寄せられてしまいます。
マイナス思考になりそうだと思い、
距離をおくようにはしているのですが、
今回もどっしりと来ました。
それに加え、訳者の河島英昭さんの文章、言葉遣いに惹かれるので、
末尾のミニ解説がずんと押し寄せてきます。
どちらの作品もほとんど泣けてきます。
明るく生きたいと望みながらも、
人間ってこういうものだと考えている自分が、
実は根本にあるのだと思うのでした。
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