「リトル・ドラマー・ガール」 ジョン・ル・カレ著 村上博基訳 ハヤカワ文庫
この本は1983年に発表されています。
スパイ・スリラーのジャンルとしては、
実に長い年月が経っており、
現代社会との隔たりに、
ついて行くのが困難ともいえます。
が、タイム・スリップしてみてください。
イスラエルとパレスチナ解放機構との戦いは、
当時世界中が注目していました。
残念ながら、現在も続いています。
それがこの本の舞台となります。
ただ、主人公チャーリィはその舞台に参加を要請された
イギリス人の女性なのです。
緻密に練られたストーリーに、
翻弄されるかのように入り込み、
見事に演じてみせるチャーリィ。
でも、これはとても想像を絶する演技です。
生死をかけたチャーリィを支えるのは、
たった一つの愛です。
ジョン・ル・カレの文章には、
どこに力点をおいて読めばよいのかわからなくなる複雑さが
あります。
それだけ込み入っています。
その一つ一つが後になって生きてくるのです。
ここでは、イスラエル側の話となっていますが、
決して、どちらかを正当化しているわけではありません。
ただ、チャーリィの冒険によって、
戦争地帯の凄まじさを知ることができるでしょう。
実際には、これどころではないはずです。
そして、政治上の駆け引きも、興味深く読むことができます。
どこまでが真実に近いのかは、わかりかねますが、
単純な話ではないということは確かです。
いや、この小説が、戦争を舞台にはしているものの、
すべてを語っているわけではなく、
小説として読むのでもいいわけです。
ただ、世界は様々な様相をしている、ということを
提示していると考えられる、と思って読みました。
ジョセフ、重要な役割の男性。
彼とチャーリィの物語でもあります。
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