2017年1月26日木曜日

「ウェイクフィールドの牧師」

「ウェイクフィールドの牧師」 ゴールドスミス著 小野寺健訳 岩波文庫


ずいぶん前にも書いたことがあるのですが、
この本は「若草物語」のジョーが大笑いした、と記憶にあります。
それほど面白い本なんだろうか?とずっと気になっていたのでした。
もう40年以上前のことですね。


新訳が出てからしばらく経ちますが、
ようやく読むことができました。


18世紀のイギリスの地方に住む牧師一家のお話です。


これはもう傑作というしかないでしょう。
真面目一筋、信心深い牧師である語り手が、
家族に降りかかる災難を、
これまた誠実に真面目に語るのです。
でも、人間ですから、災難を克服するためには、
ユーモアのセンスが不可欠、というわけで、
まともに読むより、笑いながら読む方が絶対楽しい。


もちろん牧師さんですから、
神様が絶対の存在で、
信心を失ってはいけない、というわけです。


この信心深さは、現代人には理解が難しいところですね。
その精神がなければ、過去の時代には生き抜いていくのは、
困難であったでしょう。
そういう部分も、少々笑いを含ませているのがポイントでしょうか。


信心深いという点では、「いいなずけ」を思い出させました。
こちらは完全に笑いはないのですが、
申し訳なく笑ってしまいそうなくらいの説得力を持つのです。


ウェイクフィールドの方は、
最後に実は実は、という種明かしがありまして、
これが大変効き目があります。
このような結び方は昔からあるのだと、
ようやく知った次第です。


イギリスでは、18世紀頃から小説という形式の作品が、
認められるようになったそうです。
気になる一冊に「トリストラム・シャンディ」があるのですが、
これもその当時の作品だそうです。


品の良さでも、心地よく、
面白く、センスがあって、
笑わせてくれて、
説教の部分では、納得させられて、と、
醍醐味を味わえる一冊でした。


それもこれも、ジョーのおかげです。

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