上映サイクルが実に短い今日この頃なので、
早速、「ボブという名の猫」を観てきました。
主人公の青年の役は、プロの俳優さんですが、
とてもしっくりとしていて、自然な演技が冒頭から引き込んでくれました。
苦しい薬との格闘、寝るところにも、食事にも事欠く苦しい生活。
ストリート・ミュージシャンとして、ギターを大切に抱えて。
ちょうど、クスリを断つべくお医者さんにはかかっているようです。
どうにかして、まっとうに生活したいという気持ちが伝わります。
なのに、実際にはなかなかそうはいかず。
偶然出会った父親ともゆっくり話すこともできない。
父親は新しいパートナーと一緒です。
このあたりもさりげなく、短く、鑑賞者に伝わるようになっています。
お医者さんのサポートで、ようやくアパートに入れた彼。
夜、偶然しのんできた猫、それがボブです。
隣に住む女性は動物好きで、ボブのケガへの対処方法を
アドバイスしてくれたり、と親切にしてくれます。
ボブのケガが治るように、
ボブがきちんと食事ができるように、
彼は努力します。
ストリート・ミュージシャンとして、街頭で歌う彼の横には、
いつもボブがいます。
ボブが見守ってくれているのです。
ここから、いくつかエピソードがあり、
そうそう簡単にはいかないのですが、
彼にはボブがいてくれる。
主人公はほんとうに良い人なのです。
ボブがいることの意味をよくわかっている。
そして、隣の女性とのコミュニケーションについても、
まっとうな判断で行動します。
日々、色々な出来事に遭遇し、
嬉しいこと、情けないこと、苛立つこと、
悲しいこと、をボブと一緒に体験する彼。
そんな彼とボブの活動を目にした編集者が、
本に仕立てることを彼に提案し、
それが本当に本となり、多くの読者を獲得するに至ります。
彼が社会から認められる瞬間でもあるのでした。
今も彼とボブは一緒です。
ボブがいてくれたから。
彼だけじゃない、人は孤独であることも必要だけれど、
ほんとうに孤立してしまうと、生きていくことはできないのです。
独りで苦しんでいる人のことを考えさせる映画でもあり、
ロンドン(イギリス)の低所得者の苦労を垣間見せてもくれ、
喜びを与えてくれる映画でありました。
ありがちな、わざとらしいセリフやカットがほとんど無いことも、
良い点でした。
これ以上深く掘り下げると、ボブとの出会いによる喜びの到来が
薄まってしまうでしょうから、社会派映画ではないことが、
かえって良かったとも思われました。
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