「戦禍のアフガニスタンを犬と歩く」 ローリー・スチュワート著 高月園子訳
白水社
この本のタイトルは判断に誤りを起こしてしまいそうな印象があります。
このタイトルには確かに間違いはありませんが、肝心な内容が伝わってこない。
原題は“The Places in Between”、シンプルにこのままの方がいいように思われます。
著者のローリー・スチュワートはスコットランド出身。
大学卒業後、陸軍、外務省に勤めた経験を持つ若きイギリス人です。
2000年のある日、散歩していて「このまま歩き続けたらどうだろう」と考え、
その年イランを出発し、インド、パキスタンを経由しネパールまでアジア大陸を
横断する全長9600キロの旅にでたのです。
途中タリバン政権にアフガニスタンへの入国を拒否され、
アフガニスタンは後回しとなりました。
2001年にアメリカ同時多発テロが発生し、タリバン政権が崩壊、
その当時ネパールに到達していた著者は急ぎアフガニスタンへ行き、
真冬に西のヘラートから東のカブールまでの直線距離を辿り始めることにしたのです。
まだタリバン政権の崩壊から間もないアフガニスタンは、
多数の宗派のイスラム教徒からなり、人々は貧しくつつましく暮らしています。
もちろんTVなどの情報源もなく、大変な危険を伴っていたはず。
そういったアフガニスタンの現状を知ることもこの読書の与えてくれるものです。
そういったアフガニスタンの様子を知るつもりで読み出したのですが、
読み進めるにつれ、次第にこの旅人=著者の振る舞いや思考と知識、
行動力に圧倒されるようになっていきました。
知識人でとても冷静、判断力にも優れた人であることが伝わってきます。
このような人物が世界で活躍していくのだろうと、
想像するだけで、未来が明るく見えてくるほどです。
同じような旅をしたとしても、人によって得るものは異なるでしょう。
この旅人=著者は自らの持つ人間性によって多くのことをさらに知り、
体験して、それを元に今後アクションを起こしていくのだと思います。
そのような人物の魅力に加え、大切なお供の一頭の犬が、
旅人=著者の感情面を豊かに伝えてくれます。
とても読み応えのある一冊でした。
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