京都市美術館で開催されていた「バルテュス展」。
もう終了してしまったのですが、
こちらのブログをお読みくださっている方々には、
そういうことはあまり関係がないかとおもいますので、
少しだけ。
知人もお友達と行かれたようで、
写真入りのブログをUPされています。
楽しまれたかしら。
この回顧展は、名の通りバルテュスの画業の全貌を観ることができました。
まず入り口にはバルテュスのアトリエの再現。
バルテュスが使っていた鏡がぼんやりと光っています。
使われなくなった家具や道具や画材の数々は、
主人がいなくなったことを寂しく偲んでいるようにも見えました。
絵本「ミツ」。
これは原画を観たことがあり、
日本で出版された絵本を読んだこともあったので、
微笑ましく、鑑賞させていただきました。
そして、イタリアでの修業時代の作品。
このピエロ・デッラ・フランチェスカはとても好き。
初期の作品は遊び心の溢れる部分が目につきます。
1933年頃から描かれるようになった少女をモデルとした作品群。
ミステリアスな雰囲気が醸し出されています。
ここでは評判となった「鏡の中のアリス」が展示されています。
すでにきっちりとした構図、しっかりとしたデッサン、
光のあたり具合を緻密に描きこまれています。
メトロポリタン美術展で来日していた「山」の習作。
これがあの大作となったのかと思うと、
手の込んだ習作に納得がいきます。
後、スケールの大きな作品となり、圧倒されました。
「夢見るテレーズ」については、
多くの人が批評対象とされていますね。
私は美術評論は読みませんが、
作家の平野啓一郎さんの感想にとても好感を持ちました。
肖像画も多く手がけていたようです。
遊びの部分を省き、きっちりと正確に描写されています。
「おやつの時間」これは始めて観る作品。
静物描写が輝かしく、女性の眼差しも思わせぶりでいいですね。
「美しい日々」これは私もとても好きな作品です。
端正な構図、少女の眼差しの美しさ、鏡というモチーフ、
そして暖炉の火。色のバランスがしっとりとしたベースのモスグリーンに
よく映えています。
「嵐が丘」もバルテュスが愛した作品としてよく取り上げられますが、
これは前妻アントワネットとの関係も大きく絡んでいるのではないかと推測しています。
憧れのアントワネットと結婚した後の作品が何か変化があるようには感じられません。
そこが少々不思議なところです。戦争など時代背景も関係していたのでしょうか。
さて「地中海の猫」。この大好きな作品が観れるとは、
想像もしていなかったので、大喜びしています。
ファンタジー溢れる、虹から魚に変化してゆくアイデア、
それに、なんとも頼もしい猫ではありませんか。
さて、パリを離れシャシーに移ったバルテュスの作風には変化が見られます。
さらに重厚になり、マチエールの量感がその対象の質を映し出しています。
光を画の中に取り込むテクニックは、実に美しいものです。
ローマ時代の作品の中では、
「読書するカティア」が好きです。
空間の取り方も安定感を感じますし、カティアの様子もいい。
そして色の使い方がさらに複雑になっていて、
落ち着いた色調に光が差し込むところが柔らかい心地です。
「モンテカルヴェッロの風景Ⅱ」は大好きです。
水面が光っていますね。
他にはたくさんの素描が展示されています。
個人的には、この素描を観るだけで天才を感じます。
これらが、あの作品になっていったのか、と思うと、
画家というのは、才能のみならず、努力も大変。
と、観てきますと、
晩年の作品があまり無い・・・ということに気づきます。
それが少々残念です。
ただ、とても多作な人で、長生きをされたので、
数多くの作品が残されており、
まだ観ぬ作品と出合う楽しみも残されていると思っています。
この展覧会を観て、さらに観たいという欲が深まってきました。
なんと勝手なものでしょうか。
私がバルテュスの作品が好きなのは、
たぶん構図がしっかりとしていること、
深い色使いと光の取り入れ方、
重いマチエール、などがあるかと思います。
モデルの眼差しも麗しく感じられます。
美しいものを観る楽しみ、幸せですね。
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