「ワシントン・スクエア」 ヘンリー・ジェイムズ著 河島弘美訳 岩波文庫
この作品は1880年に発表されたもので、
ジェイムズの初期の一冊となります。
ウィリアム・ワイラーによって、映画化もされているそうで、
気になるところです。
初期の作品の代表としては、
「ある婦人の肖像」(1881)が挙げられます。
そういう意味で、作品を読み解く際に比較してみるのも一考と、
解説には具体的に記されています。
時は19世紀前半、ニューヨークの街が発展途上、
アメリカという国がますます力を増していく時代です。
そのニューヨークで開業医として成功をおさめているスローパー博士、
その一人娘のキャサリン、同居しているぺ二マン夫人に、
モリスという若い男性が織りなす結婚話を題材に、
彼らの心理描写を描いています。
ジェイムズに親しんでおられる方であれば、
テーマや題材、人間関係など、理解が早く、
するすると読めることでしょう。
興味深いことに、とても会話部分が多いので、
気持ちとその表現、また奥底の心理について推察しやすい方だと
思います。
ジェイムズの後期の作品は大変難解ですから、
それを考えると、わかりやすい作品といえるでしょう。
ジェイムズの作品は、一見はわかりにくいゆとりがあるように
感じています。
どれも真面目な作品で、登場人物も正面から描かれているのですが、
作者からの視点が、一定の距離を保っており、
山場の部分でも冷静に読むことができます。
もしかすると、冷静に読めるところが面白くない方もいるかもしれません。
ですが、その距離感により、
登場人物たちを観察し、気持ちを推し量り、彼らの生き方に
同情したり、苦笑したり、いらだったり、と読み手は自由に気持を
動かすことができますし、想像する自由も得ています。
私が読んだ作品は、この「ワシントン・スクエア」「ある婦人の肖像」
「鳩の翼」「金色の杯」「大使たち」にとどまっていますが、
他にも読んでみたいと常に思っています。
お気に入りは「婦人」と「大使」です。
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