2009年9月30日水曜日

「祝祭と狂乱の日々1920年代パリ」が届きました

岩崎力さんの評論「ヴァルボワまで」を発注するときに
目に付いて同じく岩崎さんの訳による冒頭の書、
ウィリアム・ワイザー著 河出書房新社
をお取り寄せしました。

この本はLes Annèes folles(レ・ザネ・フォル)と呼ばれ、
文学、絵画、舞踊、音楽、ファッション等の中心地として栄えた
1920年代のパリを描いた作品です。

この本の邦訳が出た1986年に偶然図書館で見かけて、
手に取り、水を飲み干すように読んだことを覚えています。
それがそれまで全く関心のなかったパリとの出会いでもありました。

ここに出てくる人々に魅了され、
時代の雰囲気にも圧倒されました。
それ以来、パリとこの時代に活躍した人々について
意識をもつようになり、
色々なところでの結びつきから、
読む本も広がっていったように思います。

というわけで、数多くの出会いを作ってくれた思い出の本を
再読する機会がようやく訪れたというわけです。
今読み返したら、また違った印象をもつかもしれません。

2009年9月29日火曜日

白水社から届きました

白水社からカタログが届きました。
単行本、辞典や参考書、それから新書の3冊です。
それにあわせて【読者謝恩セール2009】の案内が!
これを待っていたのです。

数年に一度、白水社では謝恩セールをしてくれます。
ある程度まとめて購入すると、
金額別に図書カードがプレゼントされるのです。
なんて嬉しい話でしょう。
早速カタログのページをめくります。
欲しい本はいくらでもありますから、
絞込むのに悩みます。

モンテーニュ「エセー」は全7巻、これまで3巻まで出ています。
1巻は入手済みとあれば、2,3巻といきますか。
シリ・ハストヴェット「フェルメールの受胎告知」も気になるし、
ペルヌー兄弟の「フランス中世歴史散歩」も愉しそうだし、
ぜーバルトも一度読んでみたい。
ジダンの伝記もちょっと目をとおしてみたい。
uブックスになってくれれば大人買いするところです。

ずいぶん前のことになりますが、
阪神大震災の時、被災地に住んでいたのですが、
一週間もしないうちに見舞い状をくださったのが、
白水社でした。
不安の中での日々でしたので、
大変嬉しく、有難く感じられました。
白水社とのお付き合いは購入者としてだけですが、
それ以来、特別な出版社だという意識を持っています。

2009年9月28日月曜日

「黒の過程」それからの読書

なぜだか「黒の過程」を読み終えた気がしません。
ゼノンのいる世界が未だ見えるような感覚が残っています。

この本に関して気になるものを、
続いて目を通してみようと思います。

一冊は「ユルスナールの靴」須賀敦子著。
この本に限らず須賀さんの本は何度繰り返し読んでも、
すうっと通り抜けてしまう感じがします。
それはきっと須賀さんの文章のうまさによるものだと思うのですが、
ゼノンのところをもう一度読めば、きっと違う感じを得られて、
読後感も落ち着いてくるのではないかと、
何か掴めるのではないかという期待を密かにもっています。
あまり欲張るといいことはありませんが。
須賀さんの本を読むのは
読書の原点に帰ることに近い意味があるので、
それだけでも十分です。

そして堀江敏幸著「書かれる手」。
ここにユルスナール論と「ユルスナールの靴」の批評があります。

それから先日買った「ブルージュ」河原温著と
ローデンバックの「死都ブルージュ」。
時代が違うので意味はないかもしれません。

そして岩崎力さんの「ヴァルボワまで」を注文しました。
届くのが待ち遠しいです。

2009年9月27日日曜日

「黒の過程」~その⑧

「黒の過程」 マルグリット・ユルスナール著 岩崎力訳 白水社

『上海からの贈り物』 堀江敏幸
堀江さんの解説はそれだけで一つの作品として
読むことのできる内容です。
堀江さんが「黒の過程」を再読することとなった契機は
滅多とない出会いだったそうですが、
それさえも偶然を通り越した逸話のようです。
堀江さんの目を通した「黒の過程」は再び息を取り戻し、
ゼノンが未だ放浪の身にあるかのような
錯覚までしてしまいそうです。

『解題=訳者あとがきにかえて』 岩崎力
ユルスナールはこの作品を書き上げた後も、
作品とともにあったようです。
それだけ渾身の、愛着のある作品なのでしょう。
読書中にも感じていたのですが、
この作品の美しさ、高貴さを失わせずに、
日本語に置き換えるのは、
ユルスナールとその作品群を深く理解していた
岩崎氏ならではの手腕でしょう。

〔個人的な・・・〕
この本はまるで綴れ織りのような作品です。
宗教、政治、思想、科学が劇的に変化する時代を背景に、
ゼノンと彼と関係のある人々たちを
それぞれの舞台において克明に描いています。
その絵図のなかのあちらこちらにゼノンの姿が見えます。
どの人々も個性豊かなので、
後々にもその名が登場したとき、ああ、あの人がと
自然に繋がっていくのです。
どのシーンも丹念に描かれており、
実在の人も想像上の人も見事に織り交じっています。
また、ユルスナールの特徴として、
丹念に選ばれた言葉による、
情緒豊かな文章と、端的に述べられた文章との
バランスの絶妙さ、
情感と高貴さを失わない書き手の視点が、
作品の質をさらに高めていると思われます。

ゼノンは錬金術、科学をベースに哲学者として思考し、
医者として活動した人間ですが、常に自由を希求した
放浪の人でもありました。
ゼノンがとっさに感じるくだりで、
他人とは思えない全く同じ感覚に襲われたことを思い出したりする、
そんな驚きもありました。
それは、他の人にも同じことが言えるでしょう。

ブリュージュを抜け出して、海岸で過ごしたときのことを
堀江さんも留意していますが、ゼノンが全くの自然体として
世界と向き合った重要なときだったと思われます。
ゼノンが孤高の人として生を前向きに生きたことが、
人の生き方に最も関心のある人間としては重要です。
そのように生きることが一番の願いです。

2009年9月26日土曜日

「黒の過程」~その⑦

「黒の過程」 マルグリット・ユルスナール著 岩崎力訳 白水社

物語は終わりを告げました。
恩人の救いの手も功をなさず、
ゼノンは死へ旅立ちます。

ゼノンの思考や、恩人との問答は、
付いていくのが難しい部分でした。
結局、ゼノンその人のすべてを知ることは
他人には無理な話かとも思います。
ただ、ゼノンが受け入れた運命を
もう一度振り返ってみるのは、
ゼノンを理解するために必要なことでしょう。

 “接近しがたい事物の原則を、人間を象って
  作られたある個人のなかに閉じ込めるのもやはり
  冒瀆だとわたしには思えるのです。それでも意に反して
  わたしは、明日火に焼かれて煙をあげるのは、
  わたしのなかにいるなにとも知れぬ神だと感じるのです。
  あえて申し上げれば、わたしをしてあなたに《ノン》と
  言わせるのは、まさにその神なのです。”

『作者の覚え書き』
ユルスナールによって、本書の成り立ち、引用、
時代考証に必要とした書物について解説されています。
史実のなかにこのフィクションを織り込むためには、
数多くの資料を研究する必要があったはずです。
元になった作品はあったといえど、この作品を書き上げるには、
多大な時間と熱心さ、努力、知力、才能が動員されているに違いありません。

2009年9月25日金曜日

「須賀敦子が歩いた道」

「須賀敦子が歩いた道」 新潮社 とんぼの本

須賀さんが歩いた道、目に留めたもの、
心ひかれたところを丁寧に辿った本です。
重点を須賀さんの視点においた写真と解説は、
須賀さんを慕う人にはうれしいつくりになっています。

第2章では友人であった松山巌さんが、
須賀さんの著書や会話を念頭に置きながら、
イタリアを訪ねています。
須賀さんの気持ちや意図を想いはかって、
会話形式で綴られています。
本当に親しかった方たちは、
須賀さんという存在の重みを感じられていることでしょう。
本を通してしか出会いはなかったとはいえ、
読者もそういった想いに近いものがあると思います。

小さな本ですが、
須賀さんのことが凝縮されて詰まっており、
切々と胸を打ちます。

須賀さんが愛した絵画、
聖母子像を始めとする数々は、
人々の心を清らかに癒し高める芸術であることを、
須賀さんを通して教えられるように思えます。

2009年9月24日木曜日

「黒の過程」~その⑥

「黒の過程」 マルグリット・ユルスナール著 岩崎力訳 白水社

  “目の前に開けているのは、霧を通して徐々に
  陽が射してくるあの美しい朝のひとつだった。”

ゼノンは海岸に向かって歩き出します。

 “事物に逆らって自分の道を切り拓いてゆく精神の歩みが
  崇高な深遠さに人を導くのは確かだったが、
  この世にあることからなる営み自体を不可能にするものでもあった。
  ・・・変化は再生であり、ほとんど輪廻と言うべきものだった。
  ・・・この出立から完全な自由が生まれつつあった。”

美しいこの『砂丘の散歩』という章の中で、
ゼノンは深呼吸をし、瑞々しい感覚をつかみ直します。

しかしこの後、ゼノンは捕らえられます。
ゼノンは冷静に逮捕を受け入れ、
その身を牢獄に置き、
己自身と向き合うことになります。

裁きを受けるにあたり、
ゼノンの著作内容や、思想について、
彼自身も司教に弁明を行い、
同時に社会観念に相対して検討されます。

ゼノンの立場の苦しさは、
嘘偽りのない彼の人格からして、
相当なものだと思われます。

今日は336ページまで。
中途半端な読み止しで、
まとまりがつきません。