
今日は閏年の2月29日、画家バルテュスの誕生日です。
誕生日の訪れない年はどうやってお祝いしていたのでしょうね。
翌日の3月1日になったら、いつの間にか一つ年を行っていたのですから。
初めてバルテュスの名を知ったのは、
何時頃だったのか、雑誌のグラビアで「黄金の午後」を観たからでした。
1956年に描かれているのでシャシー時代の作品です。
白昼夢のような光が降り注ぐ画面の中央で、
若い女性と猫がまどろんでいる、それはそれは幸福の構図でした。
微笑みを浮かべ、ひとときの休息を満喫している女性の姿は、
安らぎともいえる安堵感を呼び込んでくれました。
今も一番好きな作品かもしれません。
個人蔵の作品なので実物を観ることはかなわないでしょう。

そののちにまた一つ心打たれる作品と出会いました。
新聞に掲載されていた小さな絵。
メトロポリタン美術館所蔵の「テレーズ」です。
少女の絵ではあるのですが、
凛としたその姿は上品で潔く、強い眼差しが印象的でした。
幸いなことに数年前にこの作品は日本で公開されたので、
絵の前に立ち、しっかりと目に焼き付けてきました。
想像どおりの深くしっかりとした色合い、
構図の端正さ、そして少女の眼差し。
このように生きてみたいと思わせる意思を感じさせます。
10数年前にはアンドレ・マルローと親交のあった画家たちの作品を集めた
美術展があり、そこでは数多くのバルテュスの作品を観ることができました。
初期の「ミツ」の挿絵1921年、「猫の王」1935年、
「樹のある大きな風景」1960年、「モンテカルヴェルロの風景Ⅱ」1998年
この時も出光美術館に2度出向きました。
しっかりと観ようと思いながらも、時間とともに記憶が薄れてしまう事実を
恐れながら、できる限り体に染み込ませたいと思ったものです。
このころには日本でも評判となっていたので、
少しずつ画集などが出始めていましたし、
雑誌でもかなり取り上げられるようなっていましたね。
作家の江國香織さんがスイスを訪ねたテレビ番組もありました。
絵画は本物を観なければわからないことがありますし、
本物でしか伝えられないものもあります。
それでも私たちにはインスピレーションというのが残っています。
心浮き立つ絵、心を写し取った絵、真実を描いた絵、
素人にとって絵画を観るのはその程度ですが、
歓びを与えてくれる画家との出会いは人生の助けとなってくれると、
信じています。