2012年2月5日日曜日

身をおくこと 「北の古文書」を読み始めて


ユルスナールの「北の古文書」を読み始めました。
「追悼のしおり」では母親の祖先を辿る話でしたが、
この本では父親側の話となるそうです。
冒頭ではクレイヤンクールの土地であったモン・ノワールを軸に、
それよりももっと昔の先史から語り始めています。
北西ヨーロッパの歴史となるのでしょう、
まだ人間が現れる前の自然と命の営みを大きく俯瞰しています。

こういった文章に出会うと、
ちっぽけな自分が言葉の作り上げる雄大な世界に取り込まれて、
茫然としてしまいます。
そしてこういう文書を書く人には見えているのだろうその世界観に、
とても深く感じ入ります。

ユルスナールは人間をも含んだ世界に対して、
畏敬の念を持っていただけでなく、
自らもその一員であることをきちんと自覚しており、
その視点から立って語るようにしているように感じられます。

最初の数ページだけで、ユルスナールの世界に取り込まれ、
普段の生活の中で見えない状態にあるものを見せてくれる、
言葉だけで深さと豊かさを教えてくれる、
その中に身をおくことの素晴らしさ。
本を読む醍醐味ですね。

これからゆっくりとページを繰って、
ユルスナールの描き出す世界を歩いてみようと思います。

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