2012年7月25日水曜日
「失われた時を求めて」第3巻
「失われた時を求めて」第3巻 “花咲く乙女たちのかげにⅠ”
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫
副題に“花咲く乙女たちのかげに”とありますが、
まだ乙女はジルベルトくらいしか登場していません。
この本の第一部は“スワン夫人をめぐって”とあります。
第2巻でスワンの恋について私たちはお付き合いをしたのですが、
その行く末がここにあるように、オデットはスワン夫人となっているのでした。
シャンゼリゼで知り合って一緒に遊ぶようになった“私”とジルベルト。
そのジルベルトに恋心を抱くようになった“私”の姿は、
すでに第2巻の終了部で見られましたが、彼女がスワン夫妻の娘とは、
不思議な縁ですね。
コンブレーで度々両親を訪ねてきていて、
“私”も幼少の頃からスワンのことはよく知っていたわけですから。
第1巻ですでにコンブレー時代にジルベルトのことを見かけた時点で、
この恋が始まっているのです。
ジルベルトと会うことが大切な生きがいになっている“私”は、
スワン家に出入りするようになります。
昼餐会に招かれた際には憧れの作家ベルゴットとも知り合うことができました。
想像していたとはちょっと様子が違ったようですが、
これも憧れの対象との出会いにはありがちなこと。
ジルベルトは蝶のように気まぐれで、わがまま。
“私”を近づけたり、遠ざけたりして、実際の気持ちは全く動ぜず。
こんなに若いときから女っていうのはわからないもの。
“私”はジルベルトに翻弄されますが、少しずつ自分の心をコントロールさせ、
この恋を卒業していきます。
そういう時期を経て第二部“土地の名・土地”へ入っていきます。
病弱な“私”がかねてからその土地の名を聞いていたバルベックへ、
祖母と一緒に旅立ちます。
バカンスというか、静養というか、ちょっとした滞在旅行でしょうか。
このバルベック、どんな所なのかととても期待をしていました。
ところが、“私”からするとバルベックの教会も今一つだったようですし、
宿泊先のグランドホテルは、裕福な人々が集うサロンの体。
少なくともこの巻では風景の描写はほとんどなく、
人々の在り様ばかりが面白おかしく描かれています。
ちょっと素敵な女の子も現れて、
繊細な“私”は落ち着かないのであります。
まじめに読めば、人の心理を丁寧に深く、しつこく、根気よく描ききろうとする、
プルーストの眼差しと描写の細やかさに驚かされ、
心当たりのあることばかりに、唖然としたりさせられますが、
軽く読んでいれば、その時代の価値観に沿った一つの心理小説として楽しめますし、
これは、多様な読み方が可能な本です。
まだまだ続く長い小説ですが、
深刻になりすぎずに、楽しみながら読み進めたいと思います。
そうやって簡単によんでしまうのは、問題かしら?
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