2012年10月17日水曜日
「冬の灯台が語るとき」
「冬の灯台が語るとき」 ヨハン・テリオン著 三角和代訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ
舞台はスウェーデンの南東にあるエーランド島。
しばらくはゴシック・ミステリの雰囲気で進みます。
ゆっくり、ゆっくりと、主人公ヨアキムの心理に沿い、
物語は昔話を織り交ぜながら、
そして、副主人公的な人物や、前作で登場した人物が現れて、
重層的に形作りながら、前進していきます。
一体、最初にあった事故は殺人だったのだろうか?
幽霊たちは本当に現れるのだろうか?
なかなか進展しない状況に少々不安がつのります。
ところが、後半になると、
少しずつヨアキムたちの過去や、
周りの人物たちの行動が明らかになってきて、
一つの頂点に向かって、物語はクライマックスを迎えることになるのです。
お話はこんな感じですが、
ミステリとしては、こんなテンポの、こんな複雑な展開の作品に
出会ったことがありません。
そして、舞台となったエーランド島特有の気象条件が、
まったく未知の世界だけに、驚かされます。
この作品は見事な出来栄えです。
客観的な書きぶり、心理描写の巧みなこと、
展開のバランスの妙味、これは素晴らしい。
第一作の「黄昏に眠る秋」は少々難がありました。
雰囲気はもちろん似ているのですが、
ゆっくりのわりに、展開を急ぐ傾向がみられ、
落としどころもまずまずという感じでありました。
それだけにこの第2作の出来ばえには喝采です。
まだ続きの作品があるそうなので、
楽しみであります。
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