2013年7月17日水曜日

「流刑」


「流刑」 チェーザレ・パヴェーゼ著 河島英昭訳 岩波文庫

パヴェーゼの文章に接するのが初めての人は、
巻末の解説から入るのがいいと思われる本です。

私がこれまで読んだ作品は「美しい夏」「故郷」ですが、
いずれにしてもパヴェーゼの人生を知らないと、
なかなか理解しにくいと思っています。
この本は特に、なぜ「流刑」なのか、その背景を知らないと、
主人公ステファーノの言動がなかなか理解できない、
読み終えてもまだ理解できていないというところです。

ファシスト政権が勢いを増し、
政情が不安定なイタリア。
北イタリアのトリノで翻訳を中心とし、詩を書いていた青年パヴェーゼ。
確かに知人にはギンヅブルグのように地下活動をしていた人たちも
いたようですが、活動には関与していなかったようです。
が、トリノの知識人が一斉に検挙された中に含まれて、
そのままローマに送られ、さらには流刑という処置がとられ、
南イタリアの端っこ、海のある僻地にて監視されることになったようです。

その南イタリアの村での日々をつづった内容がこの本です。
何もなく、落ち着かず、人目を恐れ、この先のことを不安に思い、
村の人々と親しくはするものの、これといったことも話せずにいる。
そして、お世話をしてくれる女性への逃避。

釈放されて、北イタリアに戻るまでの日々を、
美しい言葉で連ねています。
とても抑制された感覚がその境遇をも表しているようです。

流刑などという状態は日本の現在ではなかなかわかりにくい。
理解不能の単身赴任に近いかもしれません。

でも流刑の経験とその心情をこのような文章で書かれているのは、
あまりないことかもしれません。

パヴェーゼの内向きの繊細な感覚が感じられる、
でも、厳しい内容の自伝的小説です。

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