「チャリング・クロス街84番地」 ヘレーン・ハンフ著 江藤淳訳 中公文庫
本好きの人なら一度はこの本のタイトルをご覧になったことがあるでしょう。
この本に出てくる本のことはほとんどわからない私でも、
書簡からにじみ出る優しさ、ユーモア、喜びと哀しみ、
互いを敬うマナーの素晴らしさに、いつも引き込まれてしまいます。
1949年、アメリカはニューヨークに住むヘレーン・ハンフ嬢から
イギリスはロンドンの古書街チャリング・クロス84番地にあるマークス社に宛てた
手紙から始まるこの書簡集、
担当者となったフランク・ドエル氏との往復書簡と送付された古書が
中心となっています。
このヘレーン・ハンフ嬢の趣味がまた面白く、
イギリス文学史に詳しい人にしかなかなかわからないのではないかと思われます。
まずヘレーンが敬愛する “Q” クイラー=クーチって誰だろう?ですから、
たまに知った著者の名前が出てくると、当たりが出たくらい嬉しくなるほどです。
俗な小説など見向きもしないヘレーン、聖書から始まり、詩集や日記等々、
とても良い趣味をされていることは、どことなくわかるのですが。
またこれに応えるドエル氏がとてもよいセンスの文章を書かれます。
この二人のまるで会話のようなやりとりが楽しいのです。
そこへエッセンスのように挟み込まれるエピソードがたくさん。
当時、食糧難であったロンドンにヘレーンは知恵を絞った食べ物を送り続けるのです。
お店に関わる人々は喜び、ヘレーンに感謝を伝えます。
そしていつかロンドンにいらっしゃい、とお誘いをし続けるのです。
そうしてこの手紙のやりとりは長く続いていきますが、
親密で楽しい時もいつかは終わりがやってきます。
こういう説明書きはあんまり役には立ちません。
一度本を開いてみてください。
本を読む楽しみ、素晴らしい本を手にした時の喜びを、
本好きの人たちとわかちあえることでしょう。
0 件のコメント:
コメントを投稿