「婚約者の友人」 フランソワ・オゾン監督
1919年の戦後のドイツの町で。
戦争で婚約者を失ったアンナは、
身寄りが無く、
婚約者の両親と暮らしています。
失意の中、つつましやかな生活を。
そんなある日、
婚約者であったフランツのお墓の前で、
泣いているフランス人男性を見かけます。
彼はフランツのパリ時代での友人だと考えたアンナとフランツの両親。
彼を迎え、暖かくもてなします。
彼とフランツとの思い出に胸をつまらせる彼ら。
フランス人を快く思っていなかった父親も、
心を開き、彼を招くようになります。
アンナと彼は町を歩き、
野原を歩き、フランツの話をしながら、
思い出にふけります。
アンナはフランスびいきだったフランツのおかげで、
フランス語が堪能です。
笑顔が戻った彼らと、彼=アドリアンですが、
アドリアンはなぜか表情に影が浮かびます。
その影の正体とは。
それを知ったアンナは。
正体を知られた彼は、
フランスへ帰ってゆき、
事実を抱えたアンナは、
フランツの両親に本当のことを話さず、
独り、苦しみを抱えることになります。
ここまでがお話の前半です。
全体がモノクロームで戦後と彼らの心象風景を
写しだしたような静かな画面が続きます。
この後、
想像できるような展開が起こり、
さらには、想像もできないような事実の展開がされていきます。
これは話してしまうと、
まったく映画の意味をなさないので、
止めておきます。
タイトルは「フランツ」ですが、
主人公はアンナです。
秘密を抱えているのはアドリアン。
アンナは知らずにいた事実を知るたびに、
精神的に強くなっていきます。
婚約者を失った悲しみにくれるだけの女性ではなくなっていくのです。
フランソワ・オゾンの作品はいくつか鑑賞していますが、
同じような映画は一つとしてありません。
そして完成度が素晴らしい。
もちろん私自身が共感できる映画ばかりではないのですが、
テーマ、映像、台詞、演出などはもちろん、
心象風景の映像の見事さは素晴らしいですし、
細やかな部分も見逃せない丁寧なつくりです。
密度の濃い映画の作り手として、
今回も見逃せないと思い、観に行ったのです。
私はテレビや映画ではそうそう泣かされることは無いのですが、
今回はかなりつらかった。
さすがに泣かされました。
そして振り返って、アンナを力づけたいと思わされ、
力づけられるのは、こちらの方なのだと気がつきました。
戦争を語る映画として、観ることも可能です。
ミステリーと評されていますが、
私はそうは思いません。
人生には謎はつきものですから。
個人的には、フランツの両親が素晴らしい人たちであることに、
感動させられました。
特別なことは何もないのですが、
普通の人々の心のあり方が美しいのです。
たいへん、素晴らしい映画です。
ただ、心が元気な時にご覧になっていただきたいです。
とても心が重くなる映画でもあります。
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