「魔法の夜」 スティーヴン・ミルハウザー著 柴田元幸訳 白水社
真夏の夜には、月が魔法をかけてくれる。
魔法をかけられた人たちの、エピソードが連なる中編小説です。
女の子、中年の男性、酔いどれ、マネキン、人形たち、
男の子、恋する女性、エトセトラ。
みんな月に酔わされたように、ふらりふらりと動き出す。
月に酔わない人もいるのです。
それぞれのエピソードが交錯するかと思えば、
普通に閉じられていくエピソードもあり、
そうそう変わっているわけでもありません。
このような題材の小説はいくつもあるでしょう。
ミルハウザーは月に酔わされた人々に夢を見せてくれます。
つかの間の夢。
かと思えば、現実的な展開もあったり、と、
同じパターンは一つとしてありません。
まったく退屈する暇などないのです。
ミルハウザーに求めるファンタジーと現実の狭間を、
月夜に眺める私たち。
この世界は誰にもまねのできるものではないでしょう。
ミルハウザーという人物はいったいどんな人なのでしょう。
飛躍する想像力、永遠に広がっていく夢、夢想、
それらを言葉に置き換えて、
現実に世界に登場させるなんて。
この小説の中身をお伝えする力は私にはありません。
一度、手に取ってみてください。
この世界は、自分の眼に見えるものだけではないかもしれません。
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