先週のことですが、
西宮市大谷記念美術館に足を伸ばしてきました。
現在開催しているのは、
「没後50年 藤田嗣治 本のしごと 文字を装う絵の世界」展です。
藤田と出会ったのはまだ学生の時分で、
エコール・ド・パリに関心を持った頃のことでした。
実際にはどんな絵なのか想像もつかず、
「ユキの回想」などを読んだ記憶があります。
すぐ後、京都の関西日仏学館で「ノルマンディーの春」が見つかり、
それを見に出かけたのが、初めての鑑賞となりました。
少しずつ、藤田の日本での評価についてもわかるようになり、
作品にも触れる機会が増え、
書物としては、清岡卓行さんの「マロニエの花が言った」を読むことで、
自分の中では終着点に落ち着いていました。
実は個人的に、好きな画ではありません。
それよりも、藤田という人間の仕事ぶりに興味が湧くのです。
かなりの仕事量の上、器用さを活かした身の回りの品の作成、
カトリックに帰依するまでは、日本人であることを意識していた様子、
写真で観られる強いまなざし、いったいこの人はどういう人?
と心のどこかにひっかかってくるのです。
今回は、本に関係した絵の展示ということで、
面白そうな企画に惹かれ、出かけてきました。
1920年代からの本の装丁、挿画の数々、
エッチングもあり、戦中の絵画も収め、
日本の雑誌の表紙、新聞連載小説の挿絵、
戦後親しい人へ書き続けたイラスト満載の手紙、
分身のように可愛がっていた猫たちの絵もいくつか、
日本の若手画家への支援の様子など、
通常の絵画展では盛り込まれずに終わってしまいそうな仕事が
たくさん、たくさん展示されていました。
そうそう、こういうところが観たかったんです、とばかりに、
ゆっくりゆっくり眺めまわしておりました。
本などは数十年を超すものばかりですから、
もちろん触れることはできませんが、
めくってみたくて仕方がありませんでした。
これは、本のしごと、というより、
藤田のサイドワークの一面の展示会という様子です。
もうすぐ大回顧展が東京、京都で催されるとのことです。
ぜひ、楽しみに参りましょう。
この様子だと、まだ藤田からは卒業できそうにありません。
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