2009年7月28日火曜日

「海へ出るつもりじゃなかった」

「海へ出るつもりじゃなかった」 アーサー・ランサム著 神宮輝夫訳 岩波書店

ヨットはもちろんボートだってお船だって、ほとんど乗ったことがありません。
でも、乗った感覚はすごくよく知っているような気がします。
それは、アーサー・ランサムを読んだことがあるから。

子供のころの話です。
もともと家にあった始めの5冊を読み出して、すっかりはまりこみ、
少しずつ残りのシリーズを買い求めて、読んでいました。
中でもこの「海へ出るつもりじゃなかった」のリアルでスリリングな内容に魅了され、
拾い読みも含め、これまで何回読んだことでしょう。

大好きなシーンはシンバットの救出です。
思いもかけず、海に出てしまった子供たちは、
無事、嵐の夜を乗り越えて、遭難者まで助けあげる気持ちのゆとりを持っていました。
そしてご褒美が待っています。

ドラマチックな内容なのに、ランサムの淡々とした表現がとても清清しく、
簡素さが感情の移入を容易にしてくれます。
また、ランサムによるシンプルな挿絵がきれいに納まって素敵です。

イギリスの子供たちは、豊かな自然の中で、
こんなに楽しい夏休みを過ごしているのかと、
とても信じられない気分になったことを覚えています。

2009年7月27日月曜日

「自分のなかに歴史をよむ」

「自分のなかに歴史をよむ」 阿部謹也著 ちくま文庫

子供の頃から外国の児童文学を好んで読んでいたので、、
のちにそちらの方面の翻訳物を中心に研究書などにも
目が行くようになりました。

中でも阿部謹也さんの名前は目にすることが多かったのですが、
ドイツの文献研究は難しすぎると考えていたのです。
そこに、学生向けのやさしい内容の本が現れたので、
読んでみることにしました。

やさしい言葉で表現されているとはいえ、
これはたいへん重要な内容の本でした。
阿部さんの生きる姿勢の基本が書かれていたのです。
そして、対象がヨーロッパの歴史のみならず、
学術に携わるときのアプローチ方法が明確にされています。

この本を読み、さらに具体的な事柄を知りたいと思い、
阿部さんの本を数冊読むことになりました。
どの本も丁寧に阿部さんの考え、手法、研究成果が表されており、
偏り勝ちな見方、考え方に刺激を与えてくれました。

それらの本についても、追々ご紹介できればと思います。

2009年7月26日日曜日

「精霊たちの家」

「精霊たちの家」 イザベル・アジェンデ著 木村榮一訳 河出書房新社

この本についても、作者についても全く知らず、
帯にプリントがあったレメディオス・バロの絵に惹かれて
手に取りました。
バロはとても好きな画家なので、
呼び止められたような気がしたのです。
パラリパラリとページを捲ってみて、
呼び声に間違いが無く、読まなければいけない本だとわかりました。
そして、この南米特有のゆらめく時間と空間を堪能することになったのです。

単に楽しむだけとしても、チリの歴史小説としても、
幻想文学としても、どこにポイントにおいても、読み応えのある作品でした。
種明かしをしてしまうのはもったいないので、止めておくとして、
精霊たちが存在した時代については、とてもファンタジックで、
甘いカクテルを飲んでいるような酩酊感を感じましたし、
より現代に近い話では、厳しい現実を突きつけられるような、
フィクションを読んでいるような感覚に陥りました。
終わりが来るのがもったいなくて、ゆっくりと進めたのですが、
大作にふさわしいエンディングにため息をつきながら、読了しました。

アジェンデについて詳しく書かれた解説を読むと、
この作品はあと2作続きがあり、大河小説となっているとのことです。
無事、民主化されたチリの様子もわかるのでしょうか、
続きが読みたくてうずうずしてしまいます。

レメディオス・バロの念力に感謝です。

2009年7月25日土曜日

クヌートがやって来た

クヌートがデスクの上を闊歩しています。
ご安心ください、体長5cmです。
ドイツ生まれなので、名前はもちろんクヌートです。

日本でも母熊が小熊の保育を放棄してしまい、
代わりに人が育てて立派に成長したという話題がありましたが、
クヌートも同じようなケースのようですね。
ホッキョクグマの赤ちゃんはぬいぐるみのように
コロコロとして可愛いですね。
白いふわふわとした毛がまた触りたくなるような感じです。

手元のクヌートはゴム細工ですが、
手足を踏ん張っている様子が猛獣らしく、頼もしいです。

2009年7月24日金曜日

「ふらんす」

ふらんす・・・? 中学生くらいのころでしょうか、
新聞広告で見かけるたびに目を留めてはみるものの、
内容の紹介を読んでも???意味不明な単語ばかり並んでいるので、
気にはなるものの、縁のない本だと思っていました。

いつの頃からか、この「ふらんす」を読むようになり、
届くたび封を開けるのに胸が高鳴ります。
今月は海辺の背景に美しい表紙の絵本が表紙で、
これだけでも夏らしさを感じられるので、
机の上の目につく所に置いています。

もちろん見るだけではもったいない、
さっと読めるところから、ページを繰り出します。

親しみやすい映画の話題もあれば、
初級文法のレッスンに取り組めるようになっていたり、
フランス語圏の話題や、特集記事、
高度な文法を分かりやすく説いてあったり、
フランスに関心のある人にはとてもありがたい存在です。

こうして、いつしか意味不明の単語も少しずつ減り、
フランス語を理解できなくても、
「ふらんす」を楽しめるようになりました。
本来の学習にはなかなか結びつきませんが。

2009年7月23日木曜日

スターバックス

ほぼ毎日スターバックスでホットコーヒーを買うのが習慣になっています。
ポットを持っていって、本日のコーヒーをショートサイズで。
日々、豆の種類が変わるので、嬉しい時もあれば、うなってしまうこともあります。
一番好きなのはシェイドグロウンメキシコ。が、滅多に登場しません。

便利なところにあるお店では、
チャイティーラテやキャラメルマキアートなど甘いものを
ついつい頼んでしまいます。
夕方が多いでしょうか。

街が休みの日は、オフィス街のお店が空いているので、
時々のんびりするために出かけたりします。
静かにお茶を飲みながら、本を読んだり、手帳を整理したり。
おだやかに時間が過ぎていくのが心地よいのでした。

意識しているわけではないのですが、
すっかりスタバ愛好家になってしまっています。

2009年7月22日水曜日

「エマ」

「エマ」 ジェイン・オースティン著 中野康司訳 ちくま文庫

以前違う訳で読んだことがありましたが、印象はいま一つだったのです。
今回新訳が出たとのことで、再度トライしてみました。
面白いことに再読してみると意外なことがあったりします。
今度もこんなに面白い作品だったのかと、驚くとともに、
自分の読書の程度に恥じ入ったのでした。

エマ、タイトルのとおり、オースティンの他の作品以上に主人公が
クローズアップされています。
彼女は大変賢く、感受性も豊かで、社会的立場にふさわしい女性です。
それでも若さゆえか、勘違いを続出させ、周りの人々にも影響を与えてしまいます。
が、聡明な男性が舵取りをし、並行して起こる数々の事件も
無事に集約されていくのです。
エマ自身もそういった出来事の中で感じ取ったり、学習したりしながら、
一回り豊かな人間になってゆく、そんなお話です。

オースティンの筆に掛かると、
彼女の所属する社会の人々も大変個性豊かに面白くおかしく描かれ、
起こる事件も身近に感じられることばかりです。
聡明な人こそなかなかいないものですが、
なぜか滑稽な人の様子は現代社会にも通じるものがあります。
小さな人間関係や、家族を中心とする小さな社会の関わりなどは、
全く現代と変わりません。
そういった普遍的な人間関係を小説の中に見事に収め、
そして幸福感まで与えてくれる、
オースティンに感謝です。

これまで、素敵な男性といえば、
ダーシーとアダム・ダルグリッシュでしたが、
ここへナイトリーも加えたいと思います。