2009年7月22日水曜日

「エマ」

「エマ」 ジェイン・オースティン著 中野康司訳 ちくま文庫

以前違う訳で読んだことがありましたが、印象はいま一つだったのです。
今回新訳が出たとのことで、再度トライしてみました。
面白いことに再読してみると意外なことがあったりします。
今度もこんなに面白い作品だったのかと、驚くとともに、
自分の読書の程度に恥じ入ったのでした。

エマ、タイトルのとおり、オースティンの他の作品以上に主人公が
クローズアップされています。
彼女は大変賢く、感受性も豊かで、社会的立場にふさわしい女性です。
それでも若さゆえか、勘違いを続出させ、周りの人々にも影響を与えてしまいます。
が、聡明な男性が舵取りをし、並行して起こる数々の事件も
無事に集約されていくのです。
エマ自身もそういった出来事の中で感じ取ったり、学習したりしながら、
一回り豊かな人間になってゆく、そんなお話です。

オースティンの筆に掛かると、
彼女の所属する社会の人々も大変個性豊かに面白くおかしく描かれ、
起こる事件も身近に感じられることばかりです。
聡明な人こそなかなかいないものですが、
なぜか滑稽な人の様子は現代社会にも通じるものがあります。
小さな人間関係や、家族を中心とする小さな社会の関わりなどは、
全く現代と変わりません。
そういった普遍的な人間関係を小説の中に見事に収め、
そして幸福感まで与えてくれる、
オースティンに感謝です。

これまで、素敵な男性といえば、
ダーシーとアダム・ダルグリッシュでしたが、
ここへナイトリーも加えたいと思います。

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