2014年2月10日月曜日

「抱擁、あるいはライスには塩を」

「抱擁、あるいはライスには塩を」 江國香織著 集英社文庫

“普通だと思っていた。
 これまでずっと、
 自分たち以外の
 家族のあり方など、
 想像もしていなかった。

 三代百年にわたる、
 風変りな家族の
 愛と冒険の物語。”

これは単行本が発売されたときの広告のコピーです。
なんて素敵なタイトル。
そして、私の大好きな一族物。
思っていたよりも早く文庫化されて、
喜んで読むことができました。

言いようがないのです。
江國さんが描いた一族物は、
いつもと同じように掴みどころがありません。
確かに私たちと同じ言葉で表現されており、
明確な単語や土地の名も記されていますし、
粋な会話もふつうの会話も交わされていますが、
人物の存在感が希薄です。

ぼんやりと霧の中に佇む洋館と、
そこに暮らす個性豊かな人々は、
時代によって少しずつずれが出て、
それぞれの道を歩んでいきます。
その道さえも現実的な路線ではあるけれど、
なんだか、大丈夫なのかな、と心配になってきます。
各自がおのおのの運命を胸に受け止め、
その流れに沿って生きていく。

が、これが江國さんの作風なのだと、
改めて思う次第でした。
好きな人は十分堪能できるのではないでしょうか。

私も江國作品の神髄を味わった気がしています。

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