2014年2月19日水曜日
「翻訳教育」
「翻訳教育」 野崎歓著 河出書房新社
翻訳書を頻繁に読んでいるというのに、
語学が苦手だからか、
翻訳について距離をおいて過ごしてきました。
でも、この本は翻訳がどれほどわくわくさせてくれるものか、
翻訳の楽しさと奥深さを伝えてくれました。
語学に関することをは横に置いても、
十分に楽しめる内容です。
思いがけないのは森鴎外にまつわる話です。
これは、この本の中にしまっておくのは惜しいと思われるほどです。
特に史伝ものは、難しすぎると敬遠してきましたが、
これは読むいい機会になりそうです。
というのも、ここで須賀敦子さんの話になるのですが、
須賀さんのお父上が読書家で森鴎外を読むよう話されていたという
エピソードが須賀さんの著作に何度か出てきます。
もちろん須賀さんはお父上からの影響も大きく、
思い出を振り返った本も書かれていますが、
そのためもあってか森鴎外を意識していたことを察することができると、
松山巌さんの指摘もあります。
話が逸れましたが、
この「翻訳教育」、翻訳に関するだけでなく、
外国文学を楽しんでいる人にはとっても興味深く読めるのではないでしょうか。
いつものとおり種明かしはしませんが、
話題のウェルベックの本についても書かれています。
これまでパスしてきたボリス・ヴィアン「日々の泡」は、
「うたかたの日々」となり、私も読めそうな気がしています。
もう一つ、自分自身が苦手としていた分野が、
何故苦手なのか、はっきりと結論を出すことができたことも収穫です。
これで、無理をして苦手分野を読む必要はなくなりました。
フローベールを例にしてみますと、
「ボヴァリー夫人」はとても興味深い本で、繰り返し読んでいますが、
「感情教育」はちっとも面白くないです。
主人公に少しも思い入れができないし、
アルヌー夫人のどこがいいのか、さっぱりわかりません。
残念ながら、男性方の心理を理解しかねる女でございます。
これで、多くの男性読者が逃げていってしまいそうですね・・・
何故、苦手分野であるのか、
それは簡単にはいかない話ですので、
個人的な理由と解してください。
フランス装のとっても素敵なこの「翻訳教育」、
タイトルには複雑な思いを抱きますが、
とても読み応えのある本です。
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