「夢の中の夢」 アントニオ・タブッキ著 和田忠彦訳 岩波文庫
訳者の和田氏の言葉から、
“タブッキは、自分の愛する芸術家たちがどんな夢を見たかを
想像し、でっち上げ、仮説を立てることによって、かれら一人ひとりに
捧げる夢のオマージュを織り上げていく。
オマージュは同時に、タブッキがその芸術家をどうとらえているかを
示す批評である。”
この本の“解説に代えて”から抜粋しましたが、
この本の説明はこれがすべてであります。
というだけではそっけないので、
もう少しご説明いたしましょう。
この小さな本、紺色の地にシャヴァンヌの絵がプリントされている
小さな夢の本、内容は、20人の著名な芸術家を始めとする人々が
見たかもしれない人生の夢をタブッキが想像して書いている短編集です。
それがタブッキの手にかかると、単純な夢に終わることがありません。
その芸術家たちの作風や人生が反映された、その上、その人物のスケールに
応じた夢が短い夢の中に凝縮されているのでした。
芸術家たちの作品等に知識があれば、よりいっそう楽しむことができるでしょう。
もう、感心するしかないのです。
また、嬉しいことに、その芸術家たちを解説した短文が巻末にあり、
より、どのような人が取り上げられ、夢を描かれたか、知ることができます。
もちろんタブッキの作品一覧も掲げられており、
タブッキを知るには最適な一冊です。
夢、その不可解で、道筋が無く、脈絡も無い、はかなく消え去るものを、
このように小説として読み応えがあり、
興味深い形態をとった作品が書けるなんて、
タブッキはすごい、と感嘆したのでありました。
おまけ☆
ダイダロス、プブリウス・オウィディウス・ナーソ、
ルキウス・アプレイウス、チェッコ・アンジョリエーリ、
フランソワ・ヴィヨン、フランソワ・ラブレー、
カラヴァッジョ、フランシスコ・ゴヤ、
コウルリッジ、レオパルディ、
コッローディ、スティーヴンソン、
ランボー、チェーホフ、
ドビュッシー、ロートレック、
ペソア、マヤコフスキー、
ガルシア・ロルカ、フロイト
以上20名の夢です。
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