「バルテュス 自身を語る」 バルテュス 聞き手:アラン・ヴィルコンドレ
鳥取絹子訳 河出書房新社
取材嫌いと知られたバルテュス。
晩年に2年間かけて口述された回想記です。
幼い頃の記憶、
リルケから送られた言葉の数々、
描くことを信じ始めた頃、
イタリアでの修行時代、
ピエロ・デッラ・フランチェスカやマサッチョ、
ジョットーの偉大さ、
ピカソやジャコメッティとの交友関係、
アンドレ・マルローとの関係から、
ローマでのメディチ館の復旧時代。
妻節子の献身的な支えへの感謝。
そして、カトリック、神への信仰。
その他にも関わった人々、関心を持った事柄、
バルテュス自身が辿った道を、
静かに語っています。
常に自分を信じ、神を信じて、
孤独の中を少しずつ歩んできた長い道のり。
絵を描くことへの慎重さについて、
自然の光を重要とし、
天使が横切る瞬間を描こうとしていたと述べています。
“祈るときのと同じように絵を描く”
そのことを繰り返しています。
そのようにして描かれた作品の数々と、
このバルテュスの言葉を照らし合わせてみると、
一つの人生が大きな仕事を成し遂げた証を確かめることができます。
バルテュスの作品に惹かれる理由の一つは静謐さにありました。
ここに残された言葉を持って、その静謐さがどのように描かれたのか、
おぼろげながらわかってきたような気がします。
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