2011年9月7日水曜日

「追悼のしおり」その⑥

ユルスナールの「世界の迷路」Ⅰ「追悼のしおり」も最後のページになりました。

“覚書”にはこの本を書くために利用した文書、言い伝え、系図集や刊行物など
多くの資料を参照したということです。
作家であったオクターヴ・ピルメについてはブリュッセル国立図書館に書簡等が
残されているようですし、
ピルメについての論文「オクターヴ・ピルメ新論」も多くの情報を与えてくれたようです。
また個人的に協力された人たちも多く名を挙げられています。
目を通していると、名家でなければ残されてはいなかったであろう資料の豊富さに、
まず驚かされます。
そしてそれらのバラバラであった情報を一つのまとまりに結びつけたユルスナールの
努力に情熱を感じるのでありました。

そうやって集められた資料の元に書かれたこの一冊について、
小倉孝誠氏による“あとがき”に多面的に書かれた本であることが説明されています。
ここではユルスナールの主体を押し出さない作家としての在り方や、
この本の意義、示すところなどが語られており、
単なる回想録を超えた年代記であることが解説されています。

「世界の迷路」と名付けられているからして、年代記として読んでいいのだろうと
考えて読み進んできましたが、ユルスナールのことですから、そう簡単に読み下すことは
させてくれません。多くの登場人物が現れていますし、時間も流れていますから、
一つ一つの章を噛み砕いて、示唆するところを知るまでには一読では済みません。
簡単に述べられる感想を言わせてくれない遺産を残して去っていったユルスナール。
まだまだ道は続くのでありました。

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