「不思議の国のアリス」 ルイス・キャロル著 河合祥一郎訳 角川文庫
“黄金の 光輝く 昼下がり、
われら ゆっくり 川くだり。
オールを握るは 小さな腕、
力を出せとは ないものねだり、
幼いおててが ひらりとあがり、
ガイドのつもりで 右ひだり。
ああ、ひどい、三人娘、情がない!
ぽかぽか眠くて しかたない。
なのに お話せがむとは!
羽毛を動かす 息もない。
だけどこちらは ひとりきり、
三人相手じゃ かなわない。”
冒頭の韻を踏んだ、楽しい詩の一節です。
「不思議の国のアリス」ってこんなに面白いお話だったかしら?
昔福音館の本で読んだ印象は結構陰気に感じだったのですが。
訳者の河合氏は気鋭のシェイクスピア研究者であられるそうです。
お話の楽しい子供向けのエッセンスを満載にした、
ユーモア、ナンセンス、韻を盛り込んだ冒険譚がリアルに表れています。
アリスがどんなにナンセンスな状況に置かれても、
堂々としてる様はなんとも頼もしい。
登場人物たちのバリエーション豊かなユニークさも傑作です。
ヤマネやトカゲなどの動物たちは割とまともで、追いやられ方には哀愁を誘います。
ドードー鳥や、グリフィンなどもう存在しない動物や、空想の動物たちも大活躍。
王様、女王様、侯爵夫人のナンセンスさは人間の勝手さが見事に露呈されています。
ところどころ出てくる詩や歌もとんちんかんですっかり可笑しい。
やっぱりお気に入りは昔と変わらずチェシャーネコ。
にやにや笑いながら消えていくってシュールでナンセンスで人を馬鹿にしていて、
ほんとに気分がいい。
この文庫には、ちゃんと歌詞に楽譜もついていて、
存分に楽しめるようになっています。
構えずなんにも考えずに読んで楽しい一冊でした。
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