2011年10月30日日曜日

「本の音」を読みつつ

堀江敏幸さんの文庫化された「本の音」を読んでいます。
単行本が出たのが2002年なので少々前の書評がまとめられている本になります。

大半は読んだことのない本で、なかなかわかりづらいところです。
読んでみたい本について書かれていれば、
それはとてもいいアドバイスにもなるのですが。

読んだことのある本については、
読みこめていないところをしっかり指摘されている、
教科書のような趣きでもあります。

先日こちらで“ジュンパ・ラヒリは読んでいてつらくなるので苦手”と
書いたのですが、「停電の夜」について堀江さんは以下のように評しています。

“ラヒリの主人公たちに巣くっているのは、
 アメリカをあたらしい祖国として選んだ移民たちのみならず、
 現代人の誰もが冒された不安の病だとも言えるだろう。
 「病気の通訳」とは、だから登場人物の職業というより、
 作者自身の立場を指し示すものだ。
 相対する他者の病状を通訳するだけでみずから処方箋は出さない、
 慎重で冷静で、なおかつ慈悲深い観察者の位置。
 それが若き才筆の依って立つ、美しい倫理である。”

う~ん。
そうです、そのように言っていただければ、腑に落ちるのでありました。
最近の若手の書き手にはそのような才能に溢れる人が多いようです。
現代における病なので仕方がないのでしょうか。

嗜好の問題もあるかと思います。
野崎歓さんの「フランス小説の扉」の書評では、
野崎さんの「歓び」に満ちた言葉で紹介される作品群とありますが、
そういった歓びや、幸福感に満ち溢れた本を
できることなら辿っていきたいと思うのでありました。

2011年10月26日水曜日

“暮らしのうつわ 花田”

時折“花田”さんからのDMが家に届きます。
今回のテーマは<酒器にほろ酔い>として、
4人の作家の作品の写真が載っています。

いつもこのDMの洗練された美しさを
母と感心しています。
作品も素晴らしいものばかりだけれど、
その作品を際立たせる紙面がまたあか抜けています。

“花田”は器好きの人々に愛されている有名なお店です。
東京は九段下にあり、静かなたたずまいのお店で、
一度だけ訪ねたことがあります。

目を奪う美しさの作品が整然と並び、
その審美眼に感心させられたものです。
その時は正木春蔵さんのおおぶりの平皿と、
作者は不明ですが凝った楕円形の小皿を買い求めました。
どちらも藍ものです。
今も大切に使っています。

すぐに必要なものはないけれど、
また美しい物を見に、出かけたいものです。

2011年10月23日日曜日

「メグレと無愛想な刑事」

「メグレと無愛想な刑事」 ジョルジュ・シムノン著 新庄嘉章訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ370

1957年と古い翻訳です。ですから小さい“つ”が大きかったり、
ずいぶんと古めかしい言い回しや、表現がされていたり、
いまどきこんな言葉づかいはしないだろうというような、
丁寧で古風な会話が出てきたりします。
それがまたなんともいい味わいを出しているのです。
メグレの時代はきっとそんな感じだっただろうと思われたりします。

メグレという人を紹介する部分があるわけではありませんが、
メグレの行動と考えを見ていると、
本当に頼りがいのある、思慮深い、タフで慎重で情の厚い人と
うかがえます。
ユニークなところはないけれど、読んでいてほっとさせられる、
味わい深い警察小説ですね。

この本は短編集で、4つの作品が入っています。
派手な事件はなく、どれもじっくりと捜査してじっくりと熟慮の上で
解決を見ます。見事です。
よく考えてみると、どこかにほころびがあったり、食い違いがあったりして、
ヒントとなるようです。
メグレに委ねると、まるで煮込み料理(メグレ夫人の得意料理のように)みたいに、
しっかりと考えられて立派な仕上がりになります。美味しい。

メグレ物が大好きなので、手に入る範囲で少しずつ読んでいますが、
ストックがあと2冊しかありません。
ああ、あの河出書房新社のシリーズをまるごと手に入れることができれば!

2011年10月19日水曜日

神戸へ海を見に

神戸に出かけたのは、海を見るためだったのでした。
一年に一度のお楽しみです。
神戸からさらに西に向かって電車に乗ります。
JR須磨を越えると、南側の窓に海が広がります。
飲み込まれそうなくらい広々とした海が。

陽光のあたり具合によって、
海の表情も変わります。
東側では緑がかった青なのに、西の方は白く濁って見えたり。
手前はひたすら透明に近く、思わず手をつっこみたくなります。
少し先まで見渡せば、そこはもう深く人の手に負えないくらいの海。

潮風の匂いはいつも懐かしい気分にさせられます。
海に近いところで育ったせいかもしれません。

大きな海に抱かれるような心地に、
とても安心感が生まれてきます。

一口に海といっても、所によって様々な表情があるでしょう。
見てみたいと思う海は、
ベルギーから見る北海、
クロアチアのアドリア海、
ポルトガルの大西洋、
カリフォルニアの青い海、
もちろん、トラーヴェミュンデの浜辺にも行ってみたいです。

海の出発点は、和歌山の小さな浜辺。
いつも気持は海の方を向いています。

2011年10月16日日曜日

にしむら珈琲店

神戸では有名なにしむら珈琲店でしばらく時間を過ごしてきました。
店舗はあちらこちらにありますが、
お気に入りはJR三宮駅前の三宮店です。
本店とよく似た感じで黒く磨かれた柱が調度品と重なっていて、
落ち着いた雰囲気を醸し出しています。

何よりすっきりとした珈琲は何杯飲んでも飽きません。
長く居座っている客にもお店の方は親切ですし、
ゆっくりと本を読んだり、手帳をチェックしたり、
来週のやることを考えたり、メモを取ったりと、
テーブルの上をいっぱいにして好き勝手をしていました。

特に面白いのは来店するお客さんたちの様子を見ることです。
長年の常連さんたちを中心に年配の人が多いようですが、
カップルや、若い方が一人で来られたりもしています。
入口に近い席だったのでなおさらですが、
このマンウォッチングはなかなか止められません。

大阪にはこういう感じの喫茶店が少なくなってきました。
とても不便でちょっぴり寂しい気分です。

というわけで神戸でにしむらに行くだけで元気になるのでした。

日々こもごも

ああ、西武ライオンズCS自力進出を逃す。
ああ、阪神タイガース同じくCS進出を逃す。
ああ、今日も中日ドラゴンズ、巨人に大敗。

ああ、各国で行われている格差是正デモ、声は届くのか。

ああ、今だ治らず咳の風邪。

よかったこともないわけではありませんが、
マチュー・アマルリックの映画を見損なってしまったし、
自分自身の関心のあることが手から流れていってしまっている感じです。

よく学生時代の友人が良いことがあると言っていました。
“日頃の行いが良いから♪”

ということは、日頃の行いが悪いから悪いことが起きるのか?

今夜も早く寝て夢の中で考えてみようと思います。

2011年10月12日水曜日

風邪のときのアロマオイル

風邪をひいて一週間。
今頃になってアロマオイルを焚くことを思いつきました。

風邪のときには、
ラベンダー、ティートリー、ユーカリ、ローズマリー等が
効果があります。
咳に効くのはティートリーですが手持ちがありません。
鼻風邪用ではありますが、すっきりしそうなので、
ユーカリとラベンダーを組み合わせてみました。

アロマの香りは嗅ぐだけでも気持ちのいいものですね。
なんだかゆったりと寝ることができました。
咳き込みも久々に収まっているような気がします。

手元を調べてみると、いつの間にか定番のカモミールも切れています。
ラベンダーは始終使うのですぐに無くなります。
肝心なときに使えるように、カモミールとラベンダー、ティートリーを
買っておいたほうが良さそうです。

2011年10月10日月曜日

本日も苦しかりけり

せっかくの2連休というのに、
風邪の咳があまりにも苦しく、
何一つせず一日中ゴホゴホしていました。

手元には今月の「yomyom」新潮社 があります。
特集が“この人に学ぶ暮らしのヒント”ということで、
母が貸してくれました。
予定ではこれをぱらぱら読むつもりだったのだけど。

次の休みにはもう少しは回復して、
ぱらぱらを実行したいです。

辻原登さんの「熊野でプルーストを読む」ちくま文庫も
読みかけたままになっています。
とても明晰・博識な方でちょっと尻込みしています。
これまでには「発熱」しか読んだことがなかったのですが、
とても幅広い見聞と知識とで、様々な小説を書かれているのに、
とても気になっていました。
どんなお話が聞けるのでしょうか、続きが気になります。

2011年10月9日日曜日

風邪ひき第1号

今季第1号の風邪をひいてしまいました。
ぜんそく気味の気管の風邪で、
咳がひどく呼吸が苦しいです。
じっとしているのもしんどいので、
本も読めていません。
お薬もなかなか効いてくれないし、
この連休、途方に暮れています。

まずこの復調を目指したいと思います。
読書はそれから。

2011年10月5日水曜日

「サバの秋の夜長」

「サバの秋の夜長」 大島弓子著 白泉社文庫

このお話は平成元年ごろのことだそうで、
大島さんが初めて一緒に生活した猫サバのお話です。
大島さんのファンにとっては定番の本でしょう。

先日「グーグーだって猫である」第6巻が出ていて、
このシリーズの最終巻であることを知りました。
最近の大島さんの猫たちに囲まれた生活を知ることができます。
そして大島さんが素晴らしい博愛精神の持ち主であることも、
このシリーズで改めて知ることとなりました。
今は10匹以上の可愛い家族(猫たち)と、
お庭にやってくる放浪猫たちとの行き来は、
大島さんの大忙しの生活の中心をなしているようです。
大病もされているので、大丈夫なのでしょうか?そちらも気になります。

それにしてもこのサバとの生活を振り返ってみると、
お仕事は大変だったようですが、
とてもゆったりとしていて、豊かな感じがします。
サバとのマンツーマンの生活ぶりも、とても細やかで、
サバの人格じゃない、猫格がとても面白く興味深く感じられます。
それからずいぶんと時間が経ったということでしょう。

大好きな「綿の国星」も初読は30年以上前ですが、
内容は人や猫の内面を描いているので、
そんなに時が経っているような気がしません。
時々、大島さんのこの猫たちのお話に立ち戻って、
気持ちのゆとりを推し量ったりしています。

2011年10月2日日曜日

イギリス人にはなれない

ずいぶん若い頃にP.G.ウッドハウスの短編を読んで、
こんなに面白い作家だから他の作品も翻訳されてほしいものだと
思っていました。

それからずいぶんと時間が経って、
ついにやってきました“ウッドハウス・ブーム”が。
飛びついて「比類なきジーヴス」を読んでみたのですが・・・
あまりのお馬鹿さに本を放り出してしまいました。

ジーヴスは結構です。
やはり主人のバーティが。
自分にとってイギリス貴族の紳士として代表を表すのは、
ドロシー・L・セイヤーズの作品で名高いピーター・ウィムジイ卿です。
ウィムジイとバーティと一緒に並べてはいけないことは承知しますが、
あまりに期待が大きく、勝手に想像していただけにコケテしまいました。

しかしながら、勝手に考えていたことがあだとなって、
肝心な面白さをわかっていないのではないだろうか、
不安がよぎります。
そこでコミックスの登場です。
「プリーズ、ジーヴス」 勝田文著 訳は国書刊行会と同じく森村たまきさん。

確かに面白いです。
こちらから入ればよかったかもしれません。
でも、一緒に笑えない。
「アホか~!」と失笑する程度であります。
これではイギリス人の笑いを共有することができません。
それはそれですごいショックでありました。