「失われた時を求めて」 第9巻
第五編 『囚われの女Ⅰ』
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫
そうです、アルベルチーヌはついに“私”に囚われてしまいました。
パリの自宅の一室にアルベルチーヌは暮らすようになっています。
“私”の両親は長くコンブレーに逗留しなくてはならなくなり、
留守なのです。
この一巻はまるごと“私”とアルベルチーヌとの生活を中心とした、
“私”の意識が描かれています。
ここまでアルベルチーヌを傍におくことになったのは、
アルベルチーヌの秘密の事情によるものです。
“私”はそれについて悩みに悩んでいる最中。
でも、傍においたところでアルベルチーヌの性癖が変わるわけでもなく、
彼女の心まで捉えることはできません。
ここでは、根気よく“私”の心情を聞いてあげるしかないのです。
恋というのは、このように捕まえることのできない形のないものです。
一つの言葉や態度に接したり、思い出すことで、悶々と悩まされる。
“私”の心を辿ることで、自身の内面を映し出すことにもなるでしょう。
恋に疎い私としては、ちょっとだけ距離をおいて、
からかい半分に読んだことを、著者と訳者に申し訳なく思っています。
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