「象が踏んでも」 堀江敏幸著 中公文庫
冒頭は詩「象が踏んでも」ではじまる、
『回送電車』シリーズ第4冊目です。
この『回送電車』シリーズは、
様々な媒体に掲載されたエッセイがまとめられたもので、
堀江さんの散文としては、親しみやすいもの、でありました。
というのは、ここに至って、内容はさらに難しくなっているのです。
日々のさりげない出来事との遭遇から、
あるいは、読んだ本の中から、
一つをきっかけに、堀江さんの中に蓄積されている記憶や、知識等が、
どんどん繋がって話は深く思考を促されるようになっています。
思考をいうのは、たいていぼんやりとして流れていってしまいますが、
堀江さんはそれらを緻密に言葉を選びながら、
文章化しています。
一章を読み終えるときには、堀江さんの言葉や文章から引き出された、
読者の思考やイメージが浮かび上がっていることでしょう。
なにげなく堀江さんの文章に身をゆだねるも良し、
一緒に思考の旅に出るも良し、
新に自分の思考を構築するも良し、
と、一冊の本が自分をあらたに発見する契機ともなっているのでした。
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