2015年3月15日日曜日

「赤く微笑む春」

「赤く微笑む春」 ヨハン・テオリン著 三角和代訳 ハヤカワ・ポケミス


イェルロフ・ダーヴィッドソン元船長にかかわる、
スウェーデン、エーランド島での事件の数々。
第一作目は「黄昏に眠る秋」、
二作目は「冬の灯台が語るとき」。
この第二作目で完成度の高いミステリを読むことができました。
なので、この三作目も読んでみたいと。


説明するには複雑すぎるこのミステリ。
主人公の男性がいて、
その父親の過去が絡む殺人事件が大きな筋です。
その一方で、
村に引っ越してきた夫婦がややこしい関係です。
妻はこの村の出身で、イェルロフとも遠からず関係がある。
この女性の過去もこの小説の第二の筋です。


主人公の男性も家庭生活がありますし、
気にかかる娘の病気のことも同時進行です。


それからもう一つの魅力は、
このエーランド島の春の訪れの美しさ。
深い雪に閉ざされた冬を越して到来する春は、
人々の心にも影響を与えます。
その土地に根差した不思議な精霊たちも現れ、
人間味豊かに描かれたその姿は、登場人物の心理に反映されます。


実はミステリとしては、
それほど困難な内容ではないのですが、
人間心理の描写と人々の活動とのコントラストが、
しっかりと彫り込まれていて、
じっくりと読ませます。


このようなミステリはあまりお目にかかったことがありません。
ミステリのような小説のような。
主人公たちに幸せが訪れてくれればいいな、と思わせる、
味わい深いミステリです。

0 件のコメント:

コメントを投稿