「言葉と歩く日記」 多和田葉子著 岩波新書
多和田さんは実に言葉に敏感な人ですね。
それはきっとドイツに長年住んでおられるということもあるでしょうし、
ドイツ語で作品を発表しているということもあるでしょう。
でもその前に、言葉に敏感に反応してしまう体質のように感じます。
“言語はわたしにとって体系でなく、一種の「できごと」なのでは
ないかと気づいた時、日記という形式がわたしにとっては言語
について書き記すのにふさわしいのではないかと思った。
自分の身に毎日どんなことが起こるか、予想できないし、
操作もできない。誰に会うかは、相手が拒否しない限り、
ある程度自分で決められるが、その人が何を言い出すかは
予想できない。言葉は常に驚きなのだ。”
言葉から想起されることや、言葉遊び、音の響き、言語の違い、
言葉一つからたくさんの気づきを得て、それは小説にも影響を
与えていることでしょう。
小説家、詩人の多和田さんの日々を垣間見られるという楽しさも
あります。
ただ、誰にでも楽しく読めるか?と言われると、
好みがかなり影響するかと思われます。
この日記がさらに進んでいく可能性も感じられる、
興味深い一冊です。
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