2015年3月8日日曜日

「献灯使」

「献灯使」 多和田葉子著 講談社


震災後の日本にて読まれるにふさわしい短編がいくつか
並べられています。


「献灯使」
「韋駄天どこまでも」
「不死の島」
「彼岸」
「動物たちのバベル」


表題の「献灯使」は単なるディストピア文学にとどまらないような
気がします。
確かに未来にはこのような日本があるかもしれない。
でも、人間は前に進んでいく力が潜んでいる。
だから、そのままで終わってしまうことはないだろう、
そんな考えを導き出すような作品でした。
多和田さんが『未来小説を書いたのではなく、
現代社会に潜在的に含まれているものを描いたつもりです。』と
おっしゃっているように、“今”を示唆しており、
“現代”を見つめる必要も感じられる小説です。


多和田さんの作品には色々と特色がありますが、
どれも多和田さんらしさが表れています。


個人的に言葉のゲームは苦手としているので、
そのあたりはさらりと読ませていただきました。


全く違う作品ではあるのですが、
小川洋子さんの「密やかな結晶」も、
ディストピア小説のような感覚がありました。
ゆえにラストシーンが嬉しく思われたんですが、
この「献灯使」は明るいラストではありません。
闇は簡単に消えることはありません。
ゆえに現実により近く感じられました。

0 件のコメント:

コメントを投稿