「献灯使」 多和田葉子著 講談社
震災後の日本にて読まれるにふさわしい短編がいくつか
並べられています。
「献灯使」
「韋駄天どこまでも」
「不死の島」
「彼岸」
「動物たちのバベル」
表題の「献灯使」は単なるディストピア文学にとどまらないような
気がします。
確かに未来にはこのような日本があるかもしれない。
でも、人間は前に進んでいく力が潜んでいる。
だから、そのままで終わってしまうことはないだろう、
そんな考えを導き出すような作品でした。
多和田さんが『未来小説を書いたのではなく、
現代社会に潜在的に含まれているものを描いたつもりです。』と
おっしゃっているように、“今”を示唆しており、
“現代”を見つめる必要も感じられる小説です。
多和田さんの作品には色々と特色がありますが、
どれも多和田さんらしさが表れています。
個人的に言葉のゲームは苦手としているので、
そのあたりはさらりと読ませていただきました。
全く違う作品ではあるのですが、
小川洋子さんの「密やかな結晶」も、
ディストピア小説のような感覚がありました。
ゆえにラストシーンが嬉しく思われたんですが、
この「献灯使」は明るいラストではありません。
闇は簡単に消えることはありません。
ゆえに現実により近く感じられました。
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