「なずな」 堀江敏幸著 集英社
弟夫妻の生まれて3か月の女の子“なずな”を預かる
四十すぎの独身男性“菱山秀一”さん。
地方新聞の“伊都川日報”の記者です。
どのあたりなのか、伊都川付近の杵元町にある、
杵元グランドハイツに住んでいます。
そのアパートでなずなを孤軍奮闘して育てています。
アパートの管理人さん、1階にある喫茶店兼スナック“美津保”のママ、
ご近所の佐野医院のジンゴロ先生に娘さんの友枝さん、
勤め先の編集長梅さん、といきなり多くの人が登場します。
沢山の人に支えられて、なずなの面倒を見て、生活をしているのでした。
不思議なことや、変わったことは何も起こりません。
でも、小さな赤ちゃんと共に生活をするには、色々な準備、活動、お世話が必要なのでした。
そして、在宅勤務とはいえ、仕事もこなさなければなりません。
周りの人々との関わりや、出かけた先で耳に入ってきた情報などが、
小さな町の中で結びついていきます。
外国で大きな事故に遭い、入院中の弟、
原因不明の病気で入院検査中の義理の妹、
少し先の町に住む初老の父と具合が悪くなってきた母。
人間関係を見ていると、まるで私たちの日常のようです。
違いは日々成長を見せてくれる黒い瞳のなずなの存在ですね。
赤ちゃんを育てるって本当に大変なことだけれど、
主人公はちょっと距離があるからか、少々冷静な感覚でなずなを捉えているようです。
見えてはいないけれど、見えているように可愛いなずな。
赤ちゃんの彼女との日々を描くだけで、物語になる。
まったく、そういう小説です。
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