「失われた時を求めて」第7巻 第四編“ソドムとゴモラⅠ”
マルセル・プルースト著 鈴木道彦訳 集英社文庫
ソドムとゴモラについてはお調べいただいて、
何を示す言葉であるか、ご理解の上読まれるのがよいかと思います。
この第7巻では冒頭にシャルリュス男爵のこれまで気が付かなかった一面を
知ることから始まります。
そういった人々のことを生活の場面と織り交ぜながら書かれていますが、
関係の無い人にとっては、不思議な事柄であり、
関係の深い人にとっては、とても興味深い一遍でありましょう。
その後には長く社交界の舞台が描かれます。
ゲルマント大公家の夜会です。
ここで本格的な貴族社会の様子が会話を中心に綴られますが、
正直なところ、あまりの退屈さに、お手上げしてしまいました。
しぶしぶ読み進んで、ゲルマント家を退出した“私”にほっとしました。
いつもの“私”の観察眼は冴えていますから、
この場面も角度を変えれば楽しむことができるかもしれません。
その後に、“私”は久しぶりにバルベックへ出かけます。
以前の印象とどう違って感じられるか、という心理描写は、
私たちとも縁のある感覚かと思われます。
前回のバルベックは祖母と一緒でした。
その記憶が一気に蘇り、心が動揺する場面が「心の間歇」です。
訳者の鈴木氏によると、この場面は、冒頭のマドレーヌのエピソードと
呼応する中間支点となり、この小説の重要な部分であるとのこと。
祖母が亡くなった時の場面も振り返りつつ読むと、
喪失感が迫ってくる“私”の気持ちを素直に受け取ることができるように思います。
そしてここでもアルベルチーヌが現れます。
彼女との関係はとても重要なので、細かな動きもしっかりとキャッチしておくと、
今後に繋がっていくだろうと思いつつ、読みました。
この小説には好感のもてる人物がなかなか出てこないのですが、
アルベルチーヌはそれ以上に謎めいたところのある女性です。
なんとなくの感じですが、若い女性については、
あまりうまく書かれていないように思っています。
この先、この小説はどこへいくのだろう・・・
半分近く読んできましたが、
小説に身をまかせる愉しみと、
小説世界に対する気持の複雑さとが、相混じってきました。
全体の筋は知識としてあるものの、
このまま読んでいったら、どうなるのだろう・・・?
少々怖さも感じています。
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