2014年11月24日月曜日

「ハンナ・アーレント」

「ハンナ・アーレント」 矢野久美子著 中公新書


この本について語るだけの知識も読解力もありません。
ですが、ハンナ・アーレントについて、関心を持つきっかけとなりました。
なんらかの形でメモに落としたかったのですが、
あまりの非力のため、専門家のよる書評に譲りたいと思います。


◎ドイツ文学者 池田浩士氏による書評 日経新聞より


 20世紀の政治や社会を顧みるときだけでなく、いま私たちが
生きる現実を考えるうえでも、ハンナ・アーレントという思想家は、
ますますその重要性を増している。彼女が対決した諸問題は、
いっそう深刻にこの現実を支配しているからだ。その諸問題とは、
彼女が「全体主義」と呼んだ政治・社会体制のなかで私たちを包む
無関心、差別と排外主義、歴史的事実の歪曲、そしてそれらを演出し
正当化する巨大な政治的暴力と、これを座視し追認して恥じない私たち
自身の深い退廃である。
 本書は、そのアーレントの生涯と思想を、彼女が生きた時代との関連のなかで、
主要な著作の紹介と評価に即して、簡潔かつ的確に叙述している。
アーレントについては、日本でもすでに少なからぬ研究書・概説書や評伝が刊行
されており、なかでも、晩年の彼女と親交のあったエリザベス・ヤング=ブルーエルに
よる詳細な伝記と、精神分析家・哲学者のジュリア・クリステヴァによる
思想的評伝は、アーレントの全体像を知るうえでの基本文献である。
本書も、ヤング=ブルーエルの大著に多くを負っていると思われるが、
しかし決してそれのようやくや簡略版に終わってはいない。
 ドイツのユダヤ人だったアーレントは、ナチスが政権を掌握したのち、
フランス経由でアメリカに亡命した。そこで69年の生涯を終えるまで、ユダヤ人や
「生きる価値のない存在」たちに対する暴虐の社会的根拠を問い続けることが、
彼女の終生の課題となった。ユダヤ人の真の解放はシオニズムとイスラエル国家樹立
によっては実現できないと考え、「隣人であるアラブ諸民族の重視、小国との連帯」を
提唱した。大量虐殺の実行責任者アイヒマンが逮捕されたとき、イスラエルでの裁判を
傍聴した彼女は、アイヒマンを「怪物的な悪の権化ではなく思考の欠如しった凡庸な男」
として描き、問題はナチズムだけのものではなく、無思考な体制順応の生き方をする
誰もがアイヒマンになりうると論じて、ナチスを免罪するものだと非難され、
ユダヤ人の友人の多くを失った。
 著者は、こうしたアーレントの姿勢と思想に深く共感しながら、しかし熱っぽく
その思いを語るのではない。アーレントの思想自身に語らせ、その思想への手引きの
役割を着実に果たしている。読者は、紹介される諸著作の概要を知り、自分でそれを
読む意欲を触発される。新書という限られた枠のなかで、アーレントへの
最適な道標が示されたというべきだろう。


・・・という大変重い本です。
でも、とても読みやすく、アーレントという人物がどのように生きたのか、
それだけでも、とても刺激を受けることができます。
途中、友人となったメアリー・マッカーシーが現れます。
メアリー・マッカーシーといえば、「アメリカの鳥」の著者ではありませんか。
たしか学校の先生が書いたような雰囲気の、少々固めの若者の成長物語でありました。


しっかり生きなければいけませんね。
大変ですが。
今度も選挙がありますし。
いい加減に自分のことだけを考えていたら、
怖い道に進んでしまうかもしれません。

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