2014年11月3日月曜日

「塩一トンの読書」

「塩一トンの読書」 須賀敦子著 河出文庫


表題となっているエッセイは、
人を知ることの重み、読書の重みを伝えるものとして、
いつもながら味わい深く他所で読んだ記憶があります。


この本は、主に本についてのエッセイと、書評をとりまとめてあります。
これまで私は須賀さんの書評にあまり感化されることがありませんでした。
書評というより、エッセイに近く感じており、
また取り上げられる本が私の好みとは違っていたことも理由でしょう。
でも、でも、今回じっくり読んでみると、
好みが違うのに、読みたくなってくる書評であるように感じました。
須賀さんの視点が、とても広角に広がっているのです。
そのため自分の焦点をどこに当てればよいのか、
わからなくなっていました。
落ち着いて読んでみれば、妥協のない、豊潤な知識によって支えられた上で
書かれた文章たちです。


もっとも、そういった須賀さんの個性・能力が発揮されているのが、
“作品のなかの「ものがたり」と「小説」-谷崎潤一郎『細雪』”かと思われます。
自分の中に作品を取り込み、理解をした上で、
作品批評をしている、学者としては当たり前のことでしょうが、
それでも、一般の人が十分に普通に読める内容です。


この本は単なる書評というよりも、
須賀さんの経歴等をある程度頭に入れて読まれるほうが、
内容や文章の意味がよくわかるのではないでしょうか。
ということを、いまさらながら知ったような気がします。

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