先日小川さんの「ミーナの行進」を読みました。
芦屋が舞台で、従姉妹の少女2人が中心となって
不思議で忘れられない日々を送る話でありました。
奇妙なことや、不可思議なことがたくさん起こるのに、
ちっとも違和感がないところが、
小川さんの手腕です。
これ以外にも小川さんの作品は少しばかり読んでいるのですが、
一番の好きな作品が、「ブラフマン」。
“僕”とブラフマンとの出会いから別れの日々の話です。
“僕”は相手の心を汲み取ることのできる稀有な人で、
ブラフマンにも同じように目を覗き込んで、
声を出さない彼の気持ちを考慮しつつ、
仕事に励み、ブラフマンとの時間を過ごしていきます。
その中には、
何かが隠されていて、
何かが起こりそうで、
はらはらしてしまいます。
隠されているというより、
命のあるものは明確な形態と名前を持たず、
不明であることから、神秘性を生み出しています。
ブラフマンもどんな生き物であるのか、
“僕”のメモから推察するしかありません。
小川さんの作品の好きなところは、
その神秘性と、繊細さ、そして根底にある暖かさにあります。
ゆえに大切に手に包んで守りたくなるような気持ちになります。
そして、いつまでも本の中の世界が持続しているような錯覚に陥ります。
巻末の奥泉光さんによる解説では、
この作品の妙味と小川さんの技術について語られています。
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