崎山正毅・伊澤龍雄訳 岩波文庫
久しぶりにマンスフィールドを読みました。
堀江敏幸さんの本で紹介されていたからなのですが、
もともと好きだっただけに、じっくり時間をかけて楽しみました。
マンスフィールドは完璧な作品を書くために、
“水晶のような透明さ”を求めたといいます。
ここにまとめられた19編はいずれも、完成度が高く、
隙がありませんし、目配りができており、構成もしっかりとしています。
そしてテーマに即した人物の心理の動きを丁寧に追っています。
人の心を振り回す代わりに、細やかな描写によって、
情景を明朗に映し出し、物語は映画のようにしなやかに流れます。
お気に入りは「入り海」です。
海辺と子供たちの情景がとても美しく、楽しい。
この作品を読んでいると、情景描写や心理描写において、
ヴァージニア・ウルフを思い出しました。
ウルフはマンスフィールドに一目おいていて、少々ライバル意識を
持っていたらしいので、気になる点です。
このような普遍的な内容の小説は、
いくつ年齢を重ねても、その時々にあわせて
楽しむことができると思います。
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