「パリ感覚」 渡辺守章著 岩波現代文庫
この本は1985年に「旅とトポスの精神史」の一冊として
岩波書店から刊行された、とあります。
そのとおり、これはパリを歴史と旅と地理と文化のトポスとして
考察した本です。
大変平易な表現で一般向けに書かれているのですが、
豊富な知識と知力をもって記されているだけに、
つまづいてばかりでした。
このトポスという言葉は、ギリシア語で場所を指すそうです。
これまでこのトポスという言葉に実感が伴わないまま過ごしてきました。
そんな頓馬にも、この本を読むことで、
トポスという表現がふさわしいこともあることがわかってきました。
そしてパリという場所の奥深さと麗しさと厳しさを
客観的に、俯瞰的に、愛情を持って捉える妙味があることに
共感できる本と出会ったという感じがします。
この渡辺守章という人のことをよく知らずに
この本を読み始めたことが
良かったのか、まずかったのか、
今となってはどうしようもありません。
翻訳された本の数々も評価高く、
学者として、演出家として、評論家としても
著名な方であることを後になってようやく知りました。
そういったことはさておき、
この本を一冊のエッセイとして読むことだけでも
十分楽しめましたし、
この世の中は知らないことばかりに満ちているということも
教えられる充足感がありました。
パリに行く機会が訪れたときには、
再読して出かけたいと思っています。
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