「短編コレクションⅡ」から続いて読んだ2作です。
「X町での一夜」 ハインリヒ・ベル著 松永美穂訳
大戦中のX町で主人公は、同じ列車でやってきた軍人たちと別れ、
一人になり、町で偶然顔を合わせた女性と夜を共にする。
そして翌朝旅立っていく。
それだけの筋なのです。
ですが、一人の人間が戦争中も人間らしく生きているということが、
しっかりとした文体で描かれ、
生活に密着した会話が書かれています。
それだけでも、人間らしさを感じさせられる短編です。
ただ、この女性はこの後どうしたのかな?と気になります。
ドイツ文学の翻訳家として有名な松永さんの翻訳も心地よくて、
ハインリヒ・ベルの他の作品も読んでみたくなりました。
「あずまや」 ロジェ・グルニエ著 山田稔訳
偶然ですが、この短編を読むのは2回目です。
というのも、一時ロジェ・グルニエをせっせと読んでいたことがあったから。
「編集室」「フラゴナールの婚約者」「チェーホフの感じ」など、
魅力的なタイトルの短編集は邦訳がかなりあり、
その短編が高く評価されているそうです。
ですが、実は私は短編は今一つです。
長編の「シネロマン」中編「水の鏡」の方がお気に入り。
グルニエは“幻滅の専門家”などとよばれているそうです。
この「あずまや」もそれにあてはまるでしょう。
かなりのショックを受けた主人公の動揺はいかなるものであったか。
のちに地質学者となっているのですから、
間違った道にすすんだりはしなかったのでしょうね。
凝った内容の短編小説です。
これでトルストイの「クロイツェル・ソナタ」を読む気も失せた記憶があります。
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