2013年6月30日日曜日
「最果てアーケード」
「最果てアーケード」 小川洋子著 講談社
人気の感じられないひっそりとした古びたアーケード。
幼い私はいつもベベと一緒に奥まった中庭にいることが多い。
アーケードの簡単な歴史から始まるこの小説。
アーケードにあるお店の紹介と、そこにやってくるお客様の様子を
スケッチした後、私の実体験が描かれる。
スケッチブックかアルバムのように、
いくつかのお店とエピソードが連なり、
いつもアーケードにいる私とベベはアーケードと一緒に息をしている。
母親についてははっきりと明言されているものの、
父親の姿はなかなか見えない。
そして私も空気のようにはかなげに感じられる。
物語の最終に差し掛かったところで、
私について少し語られ、少し様子が察せられたところで、
最後のエピソードが描かれる。
最後の最後まで私の存在は希薄で、
ベベの方がしっかりと存在感がある。
最果てアーケードにふさわしい住人と言えるでしょう。
不思議な浮遊感を感じられる小説ですが、
いつもの小川さんらしく“生と死”を浮かび上がらせた、
静かな作品です。
この作品はコミックスの原作として書かれたそうです。
漫画/有永イネ 「最果てアーケード」 全2巻
コミックスの様子もうかがってみたいものです。
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