まだ若すぎて わからないことばかりだった頃、
日々を生きることに意味を持たせようとやっきになっていた頃、
そんな自分を納得させてくれる本を捜し求めていました。
そこで巡りあったのが、
「パリの手記Ⅰ 海そして変容」 辻邦生著 河出文庫 でした。
書きたい、という強い気持ちと、書く、という強い意志を持ちながら、
今だその入口が見出せない、作家になる前の辻さんがいました。
毎日レッスンをするピアニストのように、毎日書くことを自分に課し、
苦悩しつつも、手探りで方向を見定めようとする姿を率直に記した
その本を当時友達のように感じていました。
この「パリの手記」はⅠ巻からⅤ巻まであるのですが、
Ⅱ巻で停滞したまま、Ⅲ巻以降は読まずにいました。
他のエッセイ等で辻さんのその後を知ったことも、
読まなかった理由かもしれません。
後々になって合本になった大型の美しい装丁の本を入手し、
辻さんのパリ時代を研究した本「辻邦生のパリ滞在」 佐々木とおる著 駿河台出版社
なども手に入れましたが、
もうかつての自分も文字の中に埋もれてしまって見えません。
今は一体どこに立っているのでしょうか。
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