「アメリカの鳥」 メアリー・マッカーシー著 中野恵津子訳
河出書房新社 世界文学全集Ⅱ-04
ようやく読み終えました。
振り返ってみれば、そう難しい話ではありません。
ただ隙がない文体なので、
きっちり読まされてしまうところがあります。
ピーター・リーヴァイはとても繊細な感覚の持ち主。
半分ユダヤ人でアメリカ生まれのアメリカ育ち。
母親は音楽家で古風なアメリカ文化をこよなく愛する人。
実父は学者、二人の養父も学者。
恵まれた環境でとても愛され、大切にされて育ったピーターです。
移り行く時代の中において、
疑問を呈し、抵抗し、生きる姿勢を模索するピーター。
フランスへ留学すると、
更に困難な問題が目の前に現れます。
悩めるピーターの姿は
誰しもが覚えがあるものでしょう。
もう19歳ともなれば、
悪態をついてひっくり返ることもできないし、
どうやって生きていくか具体的に考えるしかありません。
ピーターの立派なところは、
決して人のせいにはしないことと、
人を頼らないところです。
それは彼の座右の銘
「他者は常に究極の目的である・・・汝の行動原則」カントの定言を記した紙が彼の財布に常に入っているからです。
その言葉を基本において考え、話し、決定し、行動する。
成長の芽が現れていく過程は、
彼のその後の姿を想像するのが嬉しく思わされます。
時代背景がきっちりと組み込まれているところも、
政治や環境問題、人種問題等と
私たちが密接に関わっていることを知らされる部分です。
総合的にみてこの本は、
ホールデンの世界で一度立ち止まった人に、
次の一歩のための本となるでしょう。
いまだにフラニーのことが忘れられない人にも。
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