少々早いですが、
今年の締めの読書として、
やはりユルスナールを持ってきました。
「空間の旅・時間の旅」です。
またまた少しずつ読んでまいります。
この本には、
ユルスナールが書いた50篇以上のエッセー、評論から岩崎力さんが選んだ13編が収められています。
今日読んだのは「『皇帝列伝』における歴史の相貌」。
まず『皇帝列伝』というローマ皇帝を描いた本があるということ。
その本は6人の歴史家が書いたものだということ。
これを、前半部分では、信憑性が疑わしい、書き手が凡庸だ、などと
かなり辛らつな批判をしています。
読み続けるうちに、ではなぜこの『皇帝列伝』について言及しようと
しているのかという疑問が浮かんできます。
後半部分でこの『皇帝列伝』の持つ特徴から、
他には見られない、人々を魅了する表現世界があることや、
現在確認できる芸術品や建造物を通して過去を遡れること、
心理的な真実が感じられること、など長所も挙げられています。
そして最も重要なのは、
『皇帝列伝』の書かれ方ひとつ取り上げてもわかるように、
“われわれ自身の文明・・・そして未来がそれについてどう考えるか
を判断するさいにわれわれは近視眼的になる。”と述べ、
歴史を学ぶ重要性がここに見られることを、
具体的例を示して現代の読者を諌めています。
と簡単にまとめたところで、
ユルスナールの良さがわかるわけではありません。
ユルスナールの文章に酔うことができ、
またそこから学ぶことができる、
小説とは異なった力を持った評論です。
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