2009年12月15日火曜日

“Der Himmel uber Berlin”

「ベルリン 天使の詩」 ヴィム・ヴェンダース監督

この美しい映画を何回観たことでしょう。
公開された時、毎週一回映画館に通いました。

モノクロの画面の美しさ。
童謡が流れる中、
万年筆で白いページにさらさらと横文字が書かれていきます。
天使たちは、証言者として記憶するだけでなく、
文字にも置き換えているのです。

視点は飛行中のジェット機の中の天使から、
空中へと移り、そして地上へと舞い降りていきます。
そのまなざしの優しいこと。
天使たちは、人々を見守っているのです。

子供は大人と違って、天使を認識できるらしく、
その差は純粋さによるものかと推測しましたが、
他に要因はあるのでしょうか。

主人公の天使ダミアンは、
長い間人間の世界を見つめてきましたが、
ブランコ乗りの女性に恋をして、
人間になる決心をします。
そして彼が人間として生まれ変わった時から、
画面は総天然色に切り替わります。

人間の社会に少しずつ歩を進め、
喜びとともに馴染んでゆく姿は、
生を受けた者としての
忘れかけていた感覚を揺り動かします。

幸福感に満ちたカラーの画面。

だのに、なぜだか天使のモノクロの画面に惹かれます。
俯瞰するという視点のあり方、
静けさに満ちた精神状態は確かに天使。
天使たちが集う図書館のシーンは、
印象深いものです。

好きなシーンを思い出し、
この作品を振り返ってみるとき、
ヴェンダースの他の作品と大きく違ってみえます。
この作品の格調を高めているのは、
アンリ・アルカンによるカメラワークと
ペーター・ハントケによる脚本だと思われます。
老ホメロス役のクルト・ボイスの存在も大きいでしょう。
実際、続編も作成されましたが、
平凡な内容となっていました。

冒頭のノートをつけるシーンを観てから、
万年筆で書くということに、
憧れをもつようになりました。
アルファベットではなく、
日本語ですが。

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