「伝説の洋画家たち 二科100年展」 大阪市立美術館
二科展という名はよく聞くけれど、よくわからない。
で、あまり関心がなかった今回の展覧会でしたが、
日経新聞夕刊に高階絵里加さんが総評を書かれていたのを読み、
行くことに即決、閉展の前日に飛び込んだのです。
大正3年、官展である文展に対し、立ち上げられたのが二科展。
自由な新しい画風を求める芸術家たちが集まったとあります。
今回では主だった画家の作品が集められています。
その点数なんと132点に及びます。
著名な画家には、岸田劉生、藤田嗣治、小出楢重、東郷青児、
岡本太郎、佐伯祐三、坂本繁二郎、安井曾太郎等々。
私は古賀春江がその中にあったのが、出かける決め手となりました。
見始めると早々に西村伊作の「新宮風景」と遭遇。絵も描く人だったんだ。
中川一政の「春光」は大正4年の作で、普通にみられる筆致の油絵です。
岸田劉生の「静物」は重厚なバックに静物が輝いてみえる逸品。
国枝金三の「都会風景」は大正13年ごろの大阪御堂筋の様子が。
小出楢重の「帽子をかぶった自画像」は意気揚々とした雰囲気が伝わる
大作。
佐伯祐三は大好きな画家。パリの重々しく暗い風景の中に
アルファベットが大きく浮き上がり、呼びかけられているようです。
待望の古賀春江「素朴な月夜」はいつものシュールで、柔らかい印象、
なのに、どこか不安を抱かせる作品です。
興味深かったのは、熊谷守一と有島生馬(有島武郎の弟)と描きあった
肖像画です。どちらもしっかりと描きこんだ油絵で、熊谷守一の後の
作品とは一味違います。そして有島生馬の描いた熊谷の肖像。
仙人と言われた風貌がこのころから見られるように思われました。
好ましく思ったのは、伊藤久三郎「合歓の木」。これは現代作家の絵と
いわれてもおかしくないであろう構図。色合いは少々単調ではありますが。
また、圧倒されたのは松本竣介「画家の像」。
戦時中の絵で、すっくりと立ち上がったその像は若々しくも、強い意志を
感じさせ、横に座る家族の表情がそれを際立たせます。
緻密な筆致にも見入ってしまいました。
戦後の作品は岡本太郎に代表されるように、現代社会を先取りするような
作品が多く、抽象画によってそれらを表されている印象が強いです。
藤田嗣治は南米を旅した後の作品で、パリ時代で一世を風靡した作品
とは、少々違った趣がありました。
秀逸と思われたのは、安井曾太郎の「玉蟲先生像」。素晴らしい。完璧。
大作も多く、人物画は親しみを感じさせ、どこか安心感を漂わせる雰囲気
があり、日本人の洋画というだけで、これだけ雰囲気が変わるものかと、
驚きもありました。
どの作品もこれから羽ばたこうとする意欲と意思がしっかりと塗り込まれ、
重量感のある見応えでした。
とても満足感を味わえた展覧会、久しぶりです。
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